山崎聡 第五句集『荒星』俳句四季刊 昭和六年生 『饗宴』代表
あつまって肉食い春のすなあらし
うつうつと春の木があり水があり
さびしきは飲食のあと夏はじめ
どこをどう行けば日暮るる雪の町
とりたててすることもなく月の雨
春のまんなかかさかさと紙袋
秋分の大黒柱あるくらし
豊の秋どしんどすんと山下りて
茫洋と四方に波状を広げてゆくような作品が魅力的である。
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棚山波郎 第四句集『宝達』 角川書店刊 昭和十四年生。「春耕」副主宰
密掘の細き隧道水冷たし
荒鋤の田に動かざる厚氷
物陰の後ろに残る寒さかな
母の焚く栗飯の栗いつも多目
眠りゐて梟の首よくまはる
水槽の真中使はず熱帯魚
曼珠沙華ひとかたまりに遅速あり
日々を丁寧に絡めとる詠みかたが、好感となる。
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堤 亜由美 第一句集『リップクリーム』 俳句座☆シーズンズ叢書
1969年10月生まれ「ヘップバーン」で学んで、現在は、「俳句座☆シーズンズ」選者。
春立ちて働きしものに猫の耳
春の雪ふたりで使ふもの揃へ
すれちがふひともみてゐるさくらかな
どこまでも行ける気がして青き踏む
0歳てふ春の光のごときもの
歳一つ重ね色なき風の中
今日泣いた分だけ眠り星月夜
俳句を始めて、結婚、子育てと13年間の収穫。こうした時期を一集にする機会をもつ俳人は少ない。それだけでも十分貴重な句集だが、作品も子育てに溺れない透明感がいい。