句集『嘘のやう影のやう』の鑑賞   

 『狩』2008年 6月号  村上沙央氏

同人誌「ににん」代表の第四句集。
平成十三年以降の作品を収める。句集名は〈嘘のやう影のやう〉から。作品は多く日常から発想されているが、私生活の影を殆ど感じさせない。

安直な言葉の繋がりを拒み、真理的陰影を新鮮な取り合わせで詠う。形にとらわれない自由な表現が、そこはかとない抒情性を生んでいる。

揺り椅子を揺らさないでよ春の闇
三角は涼しき鶴の折りはじめ
白鳥に鋼の水の流れをり
古書店の中へ枯野のつづくなり

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『方円』2008年5月号   長谷川掄子氏

本句集名は『嘘のやう影のやうなる黒揚羽』から。あとがきに当時四十代だった『鹿火屋』の主宰らと登った冬至の頃の月山の思い出を記す。栞では齋藤慎爾氏が、著者を〈陸沈〉の佳人と讃え、悠揚迫らぬ態度を見つめる。静かな雰囲気に強さを秘める方なのだろう。
 嘘のやう影のやうなる黒揚羽
 緑蔭に手持ち無沙汰となりにけり
 三角は涼しき鶴の折りはじめ
 運命のやうにかしぐや空の鷹
 古書店の中へ枯野のつづくなり
 この一群の句には、独自の世界がひろがり、着眼点、言葉の扱い、ゆるぎない型など抜群

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『大』春号  境野大波氏

 「ににん」の代表である岩淵さん、「大」のスタート以前から幾度か吟行にご参加いただいて、私たちはごく近しい存在である。
薔薇園を去れと音楽鳴りわたる
嘘のやう影のやうなる黒揚羽
古書店の中へ枯野のつづくなり
岩淵さんは、たぶん吟行などでの着実な「写生」から出発して、詩の領域に近いところまで言葉を飛翔させるのではないだろうか。句集に添えられた齋藤慎爾氏の栞は読みごたえがある。

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『吉野』4月号    野田禎男氏 

春深し真昼はみんな裏通り
緑蔭に手持ち無沙汰となりにけり
雫する水着絞れば小鳥ほど
雪吊の雪吊ごとに揺れてゐる
古書店の中へ枯野のつづくなり

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『八千草』夏号  山元志津香氏

海原を日差しの濁す絵踏みかな
悟りとは杉の直樹石鹸玉
針槐キリスト今も恍惚と
嘘のやう影のやうなる黒揚羽
鶏頭は雨に濡れない花らしき
秋霖の最中へ水を買ひに出る
石鼎の貧乏ゆすり野菊晴

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