國井氏の11年ぶりの詩集。「東京物語」という題名が示すように、また、その目次の・幻視の海・・蔵前橋通り・・東京に雪が降る・・浅草幻想・・などが示すように都会派の詩である。しかし、一冊を読みとおすと、國井氏の生涯の凝縮したものが伝わってくる。そうして、その生涯を肯定も否定もしないで、叙述しているのが俳句的である。そう、國井氏は余白句会で俳句も作っていて、2年ほどまえに「森の蝶」という句集を手作りで限定30部発行している。
詩は一編ごとの一行の文字数が揃っているのが多く、何気なく読んでいると、その意味を見過ごしてしまうかもしれない。たとえば「啼く鳥」で一行が14文字に揃っているが、これもある種の呼吸を表し、視覚的表現も込めているのではないかと思う。
あの鳴き声は鵙か仏法僧か梟か
夜毎隣家から聞こ えて来るのは
不満げな孤独な鳥の く ぐも り声
ついつぶや かずにはいられない
鳥を養う な かれ又飼うなかれと
「夢の楽器」もおなじような表記のしかた。「啼く鳥」14文字で一行だが、これは16字。16音ではない。漢字も一文字に数えて上下揃いを意識している。 ににん