江戸小紋

子供の頃妙正寺川で反物を晒している風景を覚えている。近所に染物屋さんがあったからである。何時頃からか、そんな風景は見られなくなって、染物を生業とする家も少なくなった。着物の需要も無くなったせいもあるし、気の遠くなるような手作業の繰り返しは、見て居るだけでも、溜め息が出てしまう。

今日は、その妙正寺川の上流の神田川沿いにある工房で染物体験の吟行をしてきた。社長さん自らが、反物の出来上がる工程を説明してくれたのだが、やはり気の遠くなるような技術と時間を費やす分野なのである。東京小紋という商標があるようだ。先ずはそのたかだか5,60センチ四方の染型紙を作るだけでも、一ヶ月かかり2,30万から80万円くらいするのである。それも、現在は伊勢にしか職人がいない。

しかし、この染物の方法も機械化されて、そんな手間隙を掛けなくても出来るらしい。見た目も品質も変わらない。ただ、手間隙かけた手造りの誇りの問題になるだろうか。機械化は均一の仕事が出来るが、手作業は人間の呼吸が糊の乗せ具合に微妙に影響して、ムラを作る。それが味わいになるのだと、工房の人はいうのだが、うーむ、考えさせられる問題である。

今日は鮫小紋の袱紗を作らせてもらった。と言ってもその型紙で糊を乗せていく作業をさせて貰っただけ。糊をおくとはっきり鮫小紋の模様が浮き出る。その見えている模様以外のところに染料が沁みていくのだ。誰の出来栄えも同じに見えた。あとから、染料をかけて、袱紗に仕立てて送ってくれるようだ。赤や紫の袱紗はいつも使っているので、緑色を註文しておいた。

以前小田原の藍染め屋さんで、やはり藍染め体験をさせてもらったが、蝋で模様を書いたり、俳句を書いたりして、それを藍甕の中に入れると、蝋の部分が白く残るのである。これも案外巧くいって、いまだにハンカチは使っている。体験するのは、藍染めのほうが面白い。                     

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