座敷わらし

あんな細い足でも、階段を降りるときにはそれなりのかすかな響が感じられて、ルリはとんとんと木造の階を踏む音を響かせた。
或る日、その足音を横になりながら聞いていた。家族が出かけた後の蒲団の上で、もう少し寝ていたい気分だったのだ。しかし、聴いているといつもの階段を下りるときよりも強く響いて
、椅子か、それ以上の高いところから、飛び降りような強さがあった。
何しているんだろう、と思ったのは、その音がいつまでも続くからである。私は、仕方なく寝室を出て音にする洋間へ入った。
なんと、どこから湧いたのか三人の座敷わらしが跳ねていた。その跳ねる音だったのである。
「やだー、あなたたち、どこから入ったの。人に家に黙って入っちゃダメでしょう」
すぐ掃除をするつもりだったので、家中の戸を開けておいたのである。
それにしてもこんなことは初めてだし、しかも、見知らぬ顔の子供達だった。我が家は当時、L字形の家で、開け放してあっても、その洋間から、寝室は見通せなかった。
私に叱られて、子供たちはしぶしぶ跳ねるのを止めた。
それから、仕方無しに入った縁側から靴を履いた。見つかって慌てて出ていく、という風ではなく、何で出なくてはいけないの、というような怪訝な顔だった。最後に出て行く子供が靴を履きながら、おもむろに
「おばさん、どこから来たの」
と訊くのだった。ほんとに、なんだか、朝の夢がまだ覚めていないような気分だった。
ルリは何処にいるのか、姿がなかった。

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