文鳥

散歩の途中で連れ合いが小鳥を拾ってきた。
真っ白な文鳥だった。まだヒナに近いかったのかもしれない。拾うなんていうことが出来るのは。
そのときまで、ルリの存在も忘れていたが、ふと気が付くとルリが居た。
「ダメ」という言葉はルリに一番はっきり聞え、理解できている言葉。その繰り返しが何回か繰り返さした。
またまた、手数のかかる家族が増えてしまったことは確かなのである。
千一夜猫物語(17)・・文鳥がやってきた‥
外出の時に鳥籠をどこに置こうかと思案に暮れた。
家に入れておかなくてはと思うのだが、しっかり鍵のかかる部屋が無かったのである。
ルリは戸を閉めることはできないのだが、開けることはできるのである。
窮余の一策は籠の出入り口を紐で縛って、とにかく中には侵入できないようにすることだった。
そんな苦労をしているとも知らないで、ルリはなにをやっているのかという風に、正座の姿で見守っていた。
「文鳥に触ってはいけませんよ」
そう言っても通じないからなー、と思いながら、「ダメ」を繰り返した。
帰宅した時の最悪の場合でも、鳥籠が倒れたり、逆さまになっているかもしれないくらいの覚悟はしていた。
だから、玄関のカギを開けると真っ先に確かめたのは小鳥籠だった。なんと、ルリが触れた気配も無い。置かれた場所に置かれたままになっていた。
我が家の一員になったと認識する事柄であった

それじゃー、鳥は襲わない猫なのかといえば、そうではない。なぜって、野生で育った猫だ。雀などをみつけると、顎を地面につけるまで近づけて、後ろ足を伸ばしきって、飛び掛る体制をつくる。それは、ジャングルの虎の雛形である。
そして、たまにはその雀を捕ってくるのである。雀ならまだいいが、或る日帰宅したら、鼠が部屋の真中に転がっていた。いつか、子猫が転がっていたときのようにように。
「ギャー」と声を挙げてみたが、わたしが片付けるしかなかった。
家族に獲物を見せるのだ、という人がいたが誉めてはあげられない。
「お願いだから、獲物は見せに来ないでね。まして、食べもしないのに何で捕ってこなくてはならないの!!!!」
しかし、ルリには聞える言葉と聞えない言葉があるようだ。
千一夜猫物語(19)・・文鳥がやってきた‥
ガス屋さんが来たついでに、部屋のガスストーブが使えるようにしてもらうことにした。
「そろそろ、寒くなるもんねー」
見知りのガスやさんにとっては、見慣れた部屋。そこに見慣れないものが文鳥だった。
「鳥なんて飼って大丈夫なの?」
「それが、留守にしても、平気なんですよ」
「じゃー鼠なんか捕らないね」
「いやー!それがよその小鳥は捕ってくるのよ。鼠だって」
「へーそれは利口な猫だね」
ガス屋が現れたときには、何するんだろう、という感じで、近くをうろうろしていたルリも、そのうち、納得したのか、元の居場所のテレビの上に戻っていった。
自分のことが話題になっているなんて知るよしもなく。

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