猫と蜥蜴と

  この頃庭に降りると蜥蜴が走る。はじめは驚いたが、必ず目にするうちに慣れていった。慣れたといっても好きになったという訳ではない。庭に降りるときの踏み出しを、大袈裟に地を踏む。蜥蜴に知らせるつもりなのだ。そうすると必ずトカゲが走りだす。そして必ず同じ木犀の木の下に貼りつくのである。
 多分そこは土があって、保護色のつもりなのだろう。しかし、あきらかに土の色とは区別が出来て、蜥蜴の四肢のその先端まではっきり見えるのに。草陰にいたほうが余程気づかれないのに、と思った。
 2メートルくらいしか離れていない土の上から逃げようともしない。「猫に似ている」と思った。猫も追えば逃げるのだが、ある距離を保って様子を伺っているのである。こちらが、その距離を縮めれば、その近づいた分だけ遠のくだけのことなのである。

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