美猫

  散歩から帰ってきた連れ合いが
 「ルリはこの辺の何処の猫より美人だな」
 と言った。私も、珈琲を口に含みながら、当然というようにうんうんと頷いていた。
グレーと黒の縞柄は上品さを醸し出し、首のまわり、鼻の先、お腹の白さが,モノクロの縞柄の上品さをさらに際立たせていた。
 顔も鼻筋が通って、賢そうだった。とは言っても、芸をするわけではない。ただただ、ダメといったことを守ってくれるだけだった。蛇を獲ってくることもなく、秋になっていた。
 
るりの写真が見つからないまま、どこかに似た猫がいないかなーと思っていた。ルリは雑種のどこにでも居そうな猫ではあるが、その色合い、模様のありようが微妙にいいセンスをしていた。
 ところが、思わぬところにルリそっくりな猫がいた。古い雑誌の写真,俳人長谷川かな女の傍らに納まっていた。
 1887年生れのかな女だとすれば、さしずめ1907年くらい。今から百年ほど前に映されたものである。窓辺に置いた文机の前に若いかな女が坐って、傍らにルリにそっくりの猫が侍っていた。モノクロ写真だから、その猫の毛並みの色は本当はモノクロではないかもしれない。しかし、ルリは写真の色合いそのものであり、写真そのものの端正な顔であり、スタイルであった。

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