盗み食い

(58)・・盗み食い・・   [千夜一夜猫物語]  
 客を送り出して戻るまでの時間にルリが食べ残した魚をテーブルから引きずりおろして食べていた。骨をテーブルから引き摺り下ろす弾みに、魚の身が畳に散乱したのだろう。それを舐めるような格好で拾い食いしていた。
 私たちが戻っても、悪びれもしないで、
ーー文鳥は食べてはいけないが、食べ残されたものはどうせ自分の食事なのでしょーー
と言っているのだろう。
 「それは、確かに明日の朝食にまわるのだけれど、むやみにそんな食べ方されては困るのですよ。ルリちゃん」
 そう言っても、こぼれた魚の身を、食べるのを辞める気配はない。奪われそうに思ったのか、
 「フー」
 と威喝さえしていた。
 「だめでしょ」などと言っても聞えない振りをきめていた。そう、ルリはいつも都合の悪いことは聞えない振りをするのだ。骨を遠くへ骨を引きずっていって、なおさら汚れを広げていた。
やっぱりネコだった。

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