子猫出産

 ルリが出産した。
 いつの間にか二匹の子猫をが箱の中に蠢いていて、覗いても、生れた報告するわけでもなく、無心に子猫を舐め尽くしていた。
 黒のブチとモノクロの縞猫、前回の毛並に似ていたから、相手は同じ猫かもしれない。
 以前の経験から、あまり覗いてはいけないし、子猫に触ってもいけないと娘にも言い聞かせていた。今回は最初から自分の居場所があったせいか、与えてあった箱から運び出すことはなかった。
 食事時になると自分だけが箱から出てきて、餌を食べていた。
「ルリちゃん、生れたんだねー」と言っても応えるわけでもなかった。
 
 ときどき、箱の中をさり気なく覗いた。二匹は一つの塊になって声も出さずに、もくもくと動いていた。目も開いていないように見えた。
 絶えず子猫を舐めているルリは母親そのもの、すべて母親の仕草であった。子猫を食べてしまうのも母親であり、弱った猫を見捨ててしまうのも動物の母親なのかもしれない。最初に我が家に咥えてきた子猫は、きっともう育たないと本能で察知していたのだろう。
 私が子を生んだときは、看護婦さんが「女の子」ですよ、と見せてくれたときに、満足な体なのだろうかという意識を持ちながら対面したものだ。ルリも舐めながら、子猫が五体満足なことを確認しているのだろうか。
 五体満足に子猫を生んだルリだが、一度も子育てを完成させていないだ。

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