冬日和

93・・冬日和・・
朝は窓から見える欅の影が、家の中に倒れこんだ。その枝影の中に動きまわるのは、小鳥たちの影だ。外は枯れ枯れの風景だが、部屋の中に敷かれた欅の影は賑やかだった。
ルリはその欅の網目模様の真中に座り込んで、時々、動く鳥影を前足で押さえようとしていた。
そんなルリに留守番をまかせて外出した。
カモメちゃんが古墳見学に付き合えというのだ。お弁当は作ってあげるから、という。
なんだか不思議な人だ。結婚は悔いているのに、家事は手を抜かない。

94(94)・・春・・
去年の春は、あれほど家を雄猫が取り巻いて異様な声をあげたのに、今年は、いくら季節が過ぎても雄猫が寄ってこない。寄ってこないから、ルリも外に出たがらない。あの騒ぎはなんだったのか。子宮を取ってしまったことが、雄猫に分かったとしか思えない。
家の内外で、雌と雄の気配が分かり合うとすれば、嗅覚なのだろう。間違って、一匹くらい寄ってくる雄猫はいないものだろうか。猫、いや動物の世界にはプラトニックラブなどという感情はないようだ。
ルリもまた、子宮がないことで、発情期が訪れない。極めて平穏な春がやってきた。
この季節の私をわくわくさせるのは、欅より遠いところにある辛夷の大木が花をつけ始めることだった。

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