雪国から

116・・雪国・・
留守番をしているルリの餌係りを頼んでおいた家から電話があった。
ルリが餌を食べないと言うのであった。
「上げた餌が全く減ってないのよー」
きっと、電話の向こうで二宮さんは体をくの字に曲げて、傾いた顔に受話器を乗せるようにしながらしゃべっているのだろう。困ったときの何時もの癖なのだ。
「でも、まだ風呂場にたくさんあるのかもしれないわ」
「それでも、こっちはキャットフードじゃないのよ。マグロの刺身よ」
「えー、なんでそんな贅沢をさせるのよー」
「だってー、食べないから、だんだんエスカレ−トしちゃったのよ」
「三日分くらいは置いてあるはずだから、あとは帰るまで食べなくっても死なないわよー」
「でも、表にも出てこないのよ。あれから1度もルリちゃん見ていないのよ」
「大丈夫よ、奥さんが知らないときに出入りするのよ」
とは言ったものの、なんだか不安になってきた。

117・・雪国・・    
部屋へ戻って電話の経緯を伝えると、なんだか、娘も連れ合いも落ち着かなくなった。
でもなー明日は、スキーの予約もしてあるし、と思い巡らしていた。
姑は、にこにこと連れ合いをみながら、
「やっぱし飼っているんだね。ショウちゃんは猫が好きだもんね」
というのだった。きっと猫は子供の頃から飼いなれているのだ。
「夜になると、隣の猫がショウちゃんの布団に寝るのよ」
「へー」
みんなは初めて聞く話に目を見開いた。
私は、この雪の中を、どうやって猫は通ってくるのかと思った。
「だから、その猫が死んだときは、半日泣いていたわ」
「へー」
と、みんなは、さらにまた目を見開いた。
動物好きというのは生まれつきなんだなー、とあらためて感心もした。

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