櫻木美保子第一句集『だんだん』  2010年5月 山福印刷

  みずいろの九月の空に指紋あり
  秋うらら猫に人生相談する
  電話ボックス寒夕焼が先にいる
  猫のあしあとが空までつづく春
  山笑う象もうぶ毛を持っている
  あわゆきにふれるセロリは海の色
  もーにんぐ珈琲秋風を待っている
  橙や国のまわりの波がしら   
  振り返り振り返りして散る木の葉
  どの首も頭があって春の山
  万緑や家が建つまで釘の音
  雨雲の生れはじめは蝌蚪の紐
  体ごといつか出てゆく木下闇

人はあることないことを俳句作品にしていくのかもしれない。その無い事をあることに替えるのは作者の心であり、作者の表現力の冴えである。

電話ボックスに夕焼けが差しているのではない。電話ボックスに先に夕日がいた、というのはレトリックとも違う。空に指紋があると言われて宜い得ない人は、この句集の面白さがわからない。猫に人生相談をして、猫の足跡を空まで続くのが見えるのも才能というもの。「雷魚同人」

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