今回の受賞は真鍋呉夫氏の『月魄』。大正九年生れである。現在NHK朝ドラの「ゲゲゲの女房」に登場する水木しげるが大正十一年・八十八歳。私には考えられない長寿である。ところで、超空賞は昭和三十三年生れの坂井修一氏である。この年齢の開きは、俳句という文芸を特徴付けている。
俳句を老齢化させないためにという配慮がありすぎる昨今、若書きの作品をいくら持て囃しても、『月魄』の前には雲散霧消してしまうだろう。俳句が認識の文学だからである。 到達した精神が筆を動かすのである。今季受賞した真鍋氏は、以前の句集『雪女」』も話題になった。そうして、この『月魄』も魅力にあふれている。それは言語の収斂された世界が加わるのだ。
象のごとこの世の露を振りかへり
秋風に蹠を見せて歩む象
青き夜の猫がころがす蝸牛
姿見にはいつてゆきし螢かな
蛤の舌だす闇の深さかな
俳句の写生論だけでは、これらの句は生れない。魂でつかみ取る風景と言いたい。おかしみもまたそういう視線があってこそ生きるのである。「軽い句」と「軽味」はまったく別物なのである。
蛤の舌だす闇の深さかな
この句を角川の『俳句』で見て、ふか〜い溜め息をともなう、得も言われぬ感慨が。
わたしみたいな浅学ですら、何かしら感じられたくらいなので、見識の深い方にとっては、もっと奥深い味わい何かを感じ取れるんだろうな……なんて思ったり。
魂を揺さぶる俳句、というものはどんなものとはいえないのですが、
そういう作品を作りたいですね。それはたぶん、生きる姿勢に関わって
くるのだと思います。
素晴らしい句集の紹介ありがとうございます
注文していた『月魄』『雪女』が昨日届きました
いつものことですが、読み切れない句が多く、
辞書を横に置いてにらんでいます
それにしても 一ページ一句というのは
いいですね
小兵衛さんは行動派というか熱心というか、情熱的というか。
もう手にしたのですか。わたしもこの作家は好きですね。