これは「季」主宰藤沢紗智子の北澤瑞史俳句の鑑賞文である。あとがきによると、十一年間の集成だというから、北澤氏の作品のほとんどを鑑賞し尽くしたのではないだろうか。A5版の380頁近い大冊である。惜しいのは、年度を追って編集してある俳句の順序のままの索引であることだ。せめて、五十音順、あるいは季語別にして欲しかった。
「季」の創刊主宰だった北澤瑞史氏の前身は「鹿火屋」である。北澤氏は藤沢の国語教師であったが石鼎の「蔓踏んで一山の露動きけり」の句に惹かれて、「鹿火屋」の門を叩いた人物である。「鹿火屋」でもすぐ編集長に起用されて、会員の人望も篤かった。
「季」を創刊して五年程で早世してしまったのは残念だった。しかし、それを継承した藤沢紗智子氏の仕事は偏に北澤氏を顕彰することに専念したような気がする。前主宰をこれほど手厚く継承する主宰はまれではないだろうか。