現代俳句管見 評者 下條杜志子
急行の速度になればみな枯野 岩淵喜代子
(俳句2月号)
例えば、関東平野を北へ北へと列車で行けばこんな枯野が展開するだろう。事や物を極力省略した果ての「急行の速度」という措辞の力を思う句ではないだろうか。集落を出れば急行列車はスピードをあげて小さな駅を飛ばして走る。その体感までもが読者に伝わってくる。遠い山脈をうかべているいくつもの枯野は春の準備中だ。季が違えば緑一色になる。