角川『俳句』 4月号

 

合評鼎談(2月号から)    今瀬剛一・岸本尚毅・山西雅子

● 岩淵喜代子   「枯野16句」

山西
   地中には蟻の楼閣障子貼る
   数へ日の街の起伏を蕎麦屋まで
   春遠し漠に鼠のやうな顔

作り方がどれも違うところが面白かったです。
〈地中には〉の句の〈蟻の楼閣〉は「盧生の夢〉の故事を踏まえていっらしゃるんでしょうね。真っ白な障子を日当たりのいいところで貼っている。夢の中の楼閣がちらりとそこに紛れ込んでくるような感じだと思います。
 〈数へ日の〉の句は、知り尽くした街を下駄履きで行く感じで、〈街の起伏〉は本当に寄り添っている感じの表現で、実に手練といいますか、納得しました。

 〈春遠し〉の句は、〈漠〉は「漠枕」とかで詠まれたりして、どちらかというと幻想的な動物ですが、この句は動物園にいるようなバクですね。確かにネズミみたいな顔をしています。あからさまな現実感、リアリティがあって、三つとも詠み方が違いますが、それはそのままこの16句の弾力になっているような感じがして、面白かったです。

今瀬 
〈地中には〉の句は私も選んでいます。大岡信さんに「虫の夢」という詩があります。この句にはその詩と共通するところがある。想像力はすごいですよ。

    目も鼻もありて平や福笑

 これは面白い。言われると本当にこのとおりです。まさに〈平〉です。なるほど、〈福笑〉を面白い視点から捉えた。
 急行の速度になればみな枯野青いところもときどき見えるのです。常磐線でもそうです。それが本来の急行のスピードになると枯れ色しか見えなくなる。まさに真実を捉えていて、スピード感もあります。

岸本 
〈地中には〉〈急行の〉の句は戴きました。〈春遠し〉〈目も鼻も〉〈数へ日の〉の句も面白いですよ。

 蝋梅の蕊もろともに象牙色

 ロウバイの質感がうまく出せた句です。

今瀬 
よく作者だけが喜んでいて、読者が冷めてしまう句があるのですが、この句は読者も喜べる面白い作品です。

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