俳句月評 評者 小林貴子
蝋梅の蕊もろともに象牙色 岩淵だ代子
水餅の浅きところへ手を入れる ″
(『俳句』2月号「枯野」より)
一句目、蝋梅が咲きはじめると春も近いかと嬉しくなるが、ロウバイとはよく名づけられたもので、どこか作り物の蝋細工めいており、生き生きと生きているのか、寒さに負けて凍ててしまったのか、判然としない。象牙色と言われて、また新しい見方が加わった。二句目は句材の水餅が懐かしさを呼び起す。餅に対しても水に対しても、いきなり深みを掴もうとするような乱暴な扱いはしない。〈浅きところへ手を入れる〉と言われると、生活感を離れた叙情性が付与されるのは不思議だ。