『朝』 主宰・岡本眸

現代俳句月評     評者 木内憲子

急行の速度になればみな枯野       岩淵喜代子
                             (「俳句」二月号より)

 電車に乗ると先ず外を眺める。ついさっきまで歩いていた道も、日に照らされたビルの窓も、行き交う車さえ現実とは
かけ離れた特別な世界。動く絵画のようでもある。何故か車窓を通して見る景色は魅力に満ちている、ところが電車が速度をあげた途端、上塗りされたようにかすんでしまってもう目は追いつかない。そうして枯野ばかりが印象された、という句意だろうか。或いは、一駅一駅止まる都心を抜けて郊外に向かう電車の、〈急行の速度〉に入った辺りでは一面枯野であった、とも解釈できる。いずれにしても〈急行の速度〉が鍵である。やや翳りある心情を窺わせる〈枯野〉も、疾走感の乾き、に加味されて見事。

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