『ひいらぎ』 主宰・小路紫峡  2009年11月号

現代俳句の鑑賞            竹内柳影 評

   ががんぼの打つ戸を開けてやりにけり     岩淵喜代子
  
  「ががんば」は〈蚊の姥〉といわれるように、実際、大きな蚊そのものに見える。外見から、あれに剌されたら大変なことになる、と恐怖を覚えるのだが、入に害は与えない。といっても、わざわざ「戸を開けて」やってまで、家に入れることはないだろう。
  揚句の「ががんば」は、家の中から、外に出たがって「戸」を打っているのだろう。それを「戸を開けて」逃がしてやった。生き物にたいする、作者のやさしさが窺われる句である。 
                                 (「俳句四季」八月号「螢」より)

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