池袋西武デパートのリブロの奥のほうに細いエスカレーターを3階まで昇ると、詩歌書籍専門のコーナーがある。否あったというべきだった。
そこがいつの間にか古書売り場になっていた。
折角だから一巡することにした。足を運んでいる視野の端に北園克衛の薄い冊子が目に入った。
書簡もあって、芥川の手紙が何十万円だったか。
初版本のようで高価な本ばかりであったが、途中で正津勉さんの詩集が二冊並んでいるのに出会った。
出遭った以上、さらに手にとった以上は買わねばならない。
以前の書籍の装丁は風格がある。
「帰去来散稿」昭和49年 紫陽社発行。これは29歳頃のもだ。
「死ノ歌」昭和60年 思潮社発行
表題だけ見ても、正津勉の詩はいつも重いテーマである。
正津さんの二冊をカウンターにおきながら、そのあたりにあった北園克衛の本を手にとってみようと思ったが見つからなかった。
「このへんに北園克衛の本があったんだけど」
そういうと、店員は「ガラスケースの中にたくさんあります」
というのだった。
ケースの中を覗くと、みんな、さっきの一般の書棚にあった一万円の数倍した。
北園克衛は学生の頃、龍土町の石鼎の家に下宿していて、「鹿火屋」に詩を載せていた。