異土の夏雀の言葉もわからない 恵
春霖に孔雀の頸の柔らかさ 三千夫
すずめのゑんどうコップを逃走す 戯れ子
春雷の過ぎて雀の空騒ぎ たんぽぽ
冴え返りお地蔵さんに来る雀 半右衛門
華の夢に飛び込んだその雀かな 青葵
おそろしき孔雀おそろしき春月 坂石佳音
雲雀野に赤白黄の園帽子 祥 子
葉桜や靖国雀静かなり 半右衛
親雀とべば子雀まへのめり 隠岐潅木
瞑りて温みありけり雀の子 shin
追ふ雀追はるる雀さくら時 たんぽぽ
雀路燕路あり町の空 坂石佳音
竹秋の雀色時長岡京 曇遊
愛でられてこの国に住む雀の子 祥子
蒲公英の色を汚さずむら雀 ミサゴン
すでに夜のはこべらにただ在る雀 石田義風
予後の庭早くも雀隠れかな 横浜風
荒川の荒瀬のあたり揚雲雀 森岡忠志
こころにもない言葉さらり寒雀 lazyhip
ニュートンや雀の恋のひらひらと 半右衛門
四十雀の黒ネクタイも三鬼の忌 ショコラ
野辺送りいとしや雀隠れに佇ち 高楊枝
さまざまに子持雀の小さき声 壽々女
菜の花や脚を揃へて跳ぶ雀 半右衛門
その中に贔屓の雀春の風邪 たんぽぽ
遊び場の砂の無くなる雀の子 十文字
葬りし雀の墓や日脚伸ぶ 岩田 勇
料峭や埴輪の笑みの雀いろ たかはし水生
夕東風や雀が雀色の木に たんぽぽ
鶯の鳴いて雀の鳴かぬかな 半右衛門
雀みな出払つてをり雛祭 たんぽぽ
蛤の夢に雀の跳ね止まず 三千夫
とんと来ぬ雀や菜飯まだ皿に 高楊枝
口開けて顔一杯の雛雀 半右衛門
バスを待つ著莪咲く里の雀見ず 隠岐灌木
銀河系水の惑星雲雀かな 祥子
雲雀丘花屋敷駅新樹光 曇遊
揚雲雀天を支へてゐるのかも 岩田 勇
揚雲雀田は喜びて水満たす 祥子
沈丁に酔ひし雀の笑ひ声 戯れ子
藁屑を零し窓辺の雀の巣 大山つきみ
雀知らぬ子もいるらし保育園 acacia
金雀枝の二樹にこだわる兜太の句 曇遊
まさおなる空に出入りの雀二羽 西方方人
ぽつねんと雀色して春の山 西方方人
燕来て目立たなくなる雀かな ハジメ
浮世には知らぬが仏雀の子 ミサゴン
揚雲雀遠回りしてポストまで ショコラ
投錨のえりもとましゆう雀の子 ヒデ
収穫を雀と語る案山子かな 祥子
まさおなる空に出入りの雀二羽 西方来人
ちゅんちゅんと声を残して消えにけり acacia
パンくずをやうやく銜へ雀の子 岩田 勇
雀蛾の西日に溶けて夜になりぬ 三千夫
夕雲雀高く昇るは墜つるため 猫じゃらし
春風一陣雀ふとよろめきぬ 森岡忠志
揚雲雀影もろともに一つ点 隠岐潅木
燕雀も鴻鵠もなく春眠す 三千夫
雀みな出払つてをり雛祭 たんぽぽ
‘テーマ俳句掲載’ カテゴリーのアーカイブ
「ににん」27号へ転載しました
2007年6月4日 月曜日「ににん」26号へ転載しました
2007年3月9日 金曜日★空中で羽蟻が羽を伸ばしていたからと言って、なんの不思議もない。だが作者はそのごく当りまえの風景、それも、蝶や燕や鷺とは比べ物にならない微小な羽蟻の翅に焦点をあてている。その小さな蟻が小さな羽根を伸ばしているのを、感じ入っているのである。命のありようをしみじみ愛しみたいようなひと時が、ふいに襲うことがあるものだ。(喜代子)
★花やつでとは、大きな手を連想させる花である。然れば、この西洋菓子屋こそ先般来より世間を騒がせている老舗「不二家」のことか。入院中とはよく言ったものだ。 「山崎パン」と言う、大きな医者の手によって、手術がなされ退院の目処がついたようで、製造が再開されるようである。「入院す」がお見事で、時事俳句の面目躍然たり。(竹野子)
★紋切型の挨拶文を受けるより、こんな年賀状を頂いたらいっぺんに新年が洋々たる思いに満たされるであろう。「一字」かつ「一杯」は、「最小」かつ「最大」の寿ぎである。小さな穴から大きなものを覗く世界、ここに俳人の心意気がしのばれて感激の賀状である。(昌子)
★課題の文字を用いるために無理が多い中で掲句は不自然さを感じさせなかった。正月に子供連れの客が重なった折などに、見かける光景ではなかろうか。忘れられそうな季語が生かされて光っている。(恵子)
★いつの間にか溜まってしまう本の山。埃の原因ともなります。それでも単なる書類と違って、何となく簡単に捨てられないのは、そこに自分のインテリジェンスの蓄積を覚えるからでしょう。洋書となればなおさらのこと。古本屋にリサイクルもおすすめですが、交通費を使ったらわりがあいません。今年の煤払まで、ハムレットのように考えて、答えを出してみては。(千晶)
ににん26号への掲載句
2007年3月9日 金曜日十二月八日太平洋の安らけし 遊泉
コンビニの洋食並ぶクリスマス 智弘
りんごの木植ゑて洋々たる老後 たんぽぽ
牡蠣燻す太平洋をぎゅっと詰め shin
家々に洋室和室餅飾る 祥子
花びらを浮かべて何処へ太平洋 半右衛門
花やつで西洋菓子屋は入院す 三千夫
海鼠食み太平洋の果て偲ぶ acacia
外洋に視線龍馬の懐手 ヒデ
巻き爪を切る大伯母の洋間かな 石井薔子
極月や父のにほひの洋箪笥 坂石佳音
枯葉踏み洋画女優のごと歩む 戯れ子
狐火の迷うべからず太平洋 半右衛門
港燈も巡洋艦の灯も寒し たかはし水生
黒鍵の響く洋楽返り花 雨宮ちとせ
骨壷の茫洋白き冬の夜 潅木
雑煮椀おんな四代洋々と 祥子
山眠る宿に古りたる洋間かな 森岡忠志
散骨の太平洋に初日かな 智弘
手際よく洋間ベランダ豆を撒く 町田十文字
十二月八日太平洋燃ゆ 森岡忠志
春潮に洋酒瓶より白き船 祥子
茫洋とゐて憚らず昼炬燵 石田義風
初春や太平洋から霧笛あり たか雪
初富士の根は大洋に迎えられ 恵
鋤焼きに洋服掛けの見当たらず ハジメ
樟脳の香り冷たき洋箪笥 半右衛門
西洋銀座を三万人の余寒かな 秦
銭湯の太平洋に柚子浮かぶ 半右衛門
草紅葉試飲洋酒が舌を這う 智弘
太平洋見下ろす宿の根深汁 半右衛門
大漁旗父太平洋に戦敗れ 高楊枝
大空を洋凧和凧はぐれ雲 はる
大洋へ東国原知事櫓を漕ぐ 高楊枝
第九聴き和洋折衷障子張る 十文字
長靴と太平洋と春を待つ 曇遊
滴るを食む洋なしの柔き肉 桂凛火
冬茜無人の洋館明るうす 銀の星
冬晴や巡洋艦に指鉄砲 siba
冬帽子洋酒の並ぶ地下酒場 こうだなを
東洋の大遺跡背に大噴水 海苔子
読初の東洋人が犯人で 猫じゃらし
日脚のぶ洋間に誰もいなくなり 半右衛門
煤払読まぬ洋書は捨つべきか 祥子
肌脱の洋行帰りの荷風かな 祥子
風花や音軽やかに洋鋏 たんぽぽ
母の自慢祖母の洋装煤払ひ 高楊枝
明け暗れの洋に一点冬灯 西方来人
綿虫や外洋からの殉教者 ミサゴン
綿蟲の内緒話に茫洋と 半右衛門
洋もくのマドロスパイプ浜の春 町 田十文字
洋一字賀状一杯書きにけり acacia
洋花の長たらしき名風光る たんぽぽ
洋菓子のペコちゃん好きよ春を待つ 曇遊
洋菓子も和菓子も好きで炬燵番 祥子
洋館が夢二の詩に光る春 曇 遊
洋館に嫁いできたる嫁が君 ハジメ
洋館に憧れし頃根深汁 たんぽぽ
洋弓を手に取り持つや枇杷の花 愚蛙
洋行と言いし昔のつばくらめ 三千夫
洋傘を蝙蝠という冬時雨 半右衛門
洋室の窓をよるべに冬薔薇 横浜風
洋燈のぼんやりともる雪の街 たかはし水生
洋々と伴侶見せ来る寒雀 愚蛙
洋梨のワイン煮好み白寿なる 石井薔子
洋梨は母のかたちぞ日向ぼこ mako
凩や洋酒の瓶の転がりぬ 海音
茫洋と息子の佇てり毛皮着て 戯れ子
ダンデイーは洋行仕込み生身魂 岩田勇
海猫渡る遠洋漁業鮪船 曇遊
極月の内田洋行本社ビル 乱土悲龍
どれどれと洋間に作る置炬燵 祥子
ににん25号に掲載
2007年1月3日 水曜日黄昏の貧乏蔓魔女が住む 曇遊
屠蘇飲むや貧乏神の大いびき 祥子
素ツ寒貧とラムネの壜を振りし頃 石井薔子
貧乏は嫌ひ昼寝とツナが好き 猫じゃらし
爪紅や膝に貧血気味の猫 きつこ
貧弱な乳房となりて秋ともし ミサゴン
清貧の文士密葬星流る 町田十文字
ちちろ鳴く明かり貧しき母の通夜 潅木
日も山も貧乏も神豊の秋 佳音
貧乏神追い出すように鉦叩 ミサゴン
曼珠沙華貧相な川燃え残す 恵
貧しさに耐えて鳴きたるキリギリス 遊子
貧富などどうでもよろし朝の露 ミサゴン
赤貧も障子も洗ふ上天気 恵
宰相の言葉貧しくちちろ鳴き 町田十文字
貧しい路地に月光を浴びている 乙牛
貧しさに空見あげれば百日紅 acacia
貧相を福相となす大昼寝 横浜風
神無月貧乏神の残りけり 乱土飛龍
治家に貧者の顔なく秋深む じゃが芋
貧しくて寒くておしくら饅頭 森岡忠志
螻蛄鳴いてをるやあしたの素寒貧 siba
陋屋に月も貧しくなりにけり 石田義風
岸和田に貧富などなき秋祭り 遊子
貧血の子は集められ草の花 乱土飛龍
台北の貧民街やあかとんぼ ショコラ
枯れ葉散る貧しき墓に詣でたり 遊子
蓑虫の貧しき家にくつろげり 祥子
新蕎麦や貧しさ言へば友もまた たんぽぽ
爽やかや托鉢僧と貧しさと 和人
あの頃はみんな貧乏新酒酌む shin
貧しさの貧しさありぬ放屁虫 潅木
秋風や貧相な猫の背ナ凛と 星野華子
赤貧のあとはあらざりすいつちよん ヒデ
貧しくて角在る話冬ざるる 遊子
相伝の器用貧乏冬至粥 たかはし水生
貧乏と知っているのか鰯雲 遊子
貧相を持ち堪へゐし冬の雲 泰
消えぬ灯に貧女の一燈秋深し 迷愚
蛇穴に吾は貧相な髭を剃る 森岡忠志
月の川渡り貧窮問答歌 ショコラ
天高し貧乏くじの留守番に 遊子
貧するも振れる袖あり七五三 lazyhip
貧すれば鈍するはは常鳥渡る 岩田 勇