「街」所属だが、その前に詩集を数冊発刊している。
夜の梅鋏のごとくひらく足
雪の夜や体重計という孤島
月の部屋抱き合ふ影は蜘蛛のごと
独りの夜耕牛に踏みしだかれてゐる
昼蛙乳房さびしき熱を帯ぶ
二句目の「孤島」の比喩は独創的。四句目はまさに象徴詩というべき類に属する。 今井聖氏が序文で書かかなくても、数ページ繰れば性をテーマにしている作品群であることがわかる。上記の句は目次「軀」の章からの抽出だが、一句目の情景などは開高健の小説の一場面にある。鋏とは言っていなかったが、特異な場面の描写で印象で覚えている。今題名は思い出せないが。
目次はさらに「横須賀」・「煙の父」・「死霊」・「派遣OL東京漂流」・「赤き毛皮」となる。作者が意識的に作句していることが、内容をわかりやすくしてしまっているかもしれない。