関口恭代句集『よろこび』   2009年7月 本阿弥書店刊

 『帆』主宰。昭和三年という生年月日を知ると吃驚してしまう。それほど若々しいのである。「事務所と家が離れているので忙しいのよ」と淡々というあたりにも、関口氏の若さがある。句集は平成十年から十三年末までの約三百句。ということは、間を置かず句集上梓があるのだろう。

  卯月八日さり気なく老い髪を梳く
  
 自選句に上記の句がある。「さり気なく老い」のあたりに、老いの自意識を秘めながらも、これから生きる時間にも、振り返る時間にも等分に視線を投げているのが感じられる。

  仮の世の夕日に沈む冬の蝶
  寒晴れの沖へ翼を運ぶもの
  塩水を吹いて浅蜊のさびしき夜
  己が影たのしみて舞ふ紋白蝶
  大空の果てより飛んできた枯葉

 老いるということは、生への慈愛の育てることであるということを教えてくれる一書である。

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