あとがきによればーー2009年8月1日で満60歳を迎えるために一つの節目として出版に踏み切った、とある。還暦ということもあって、第二の処女句集という意識もある著者の第八句集。
風狂の舟の来てゐる花辛夷
鳥帰る舟に雨情を残しつつ
花守の身はひとひらの舟ならむ
湖岸へと舟片寄せつ春惜しむ
月凉し起稿は舟に乗るごとし
句集名を『風舟』としたように、「舟」は風雅の舟として象徴的に使われている。掲出のどの句にも、その意思が汲み取れて、小澤氏の言う第二の処女句集という言葉にも重なる。ここで面白いと思ったのは、第四句「湖岸」まで実像の舟、そうして五句目の舟は比喩の舟である。しかし、この舟が一番印象に残り、その実像感があることに注目した。
木の橋の真ん中乾く雀の子
白靴のいきなり海の端に立つ
春昼の海見て馬の振り向かず
清水湧くいのちの重さ軽さなど
セーターをくぐりて星の国に出づ
いずれの句も輪郭の明瞭さが魅力を発揮している。それは輪郭を得ることが詩心を形作っているからである。一句目の雀、二句目の白靴の存在感。三句目、四句目の心象風景。中でも五句目の飛躍がことにいい。
こんにちは。記念祝賀会にご臨席を頂きまして、誠にありがとうございました。また句集『風舟』へのご鑑賞を早速掲載していただきましてありがとうございました。的確なご批評で感銘致しました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。まずはお礼と思いまして。 小澤克己より。
お目に留まって恐縮です。簡単な紹介ですみません。
こんにちは。本日『俳句』12月号届きました。小特集・句集『風舟』に2ページにわたる的確なご鑑賞を下さりましてまことにありがとうございました。詩的な位置と比喩表現を
含めて、俳句の高揚をさらに図ってゆきたいと思います。ありがとうございました。各一
句鑑賞の7名の方々も好意的で深く、温かい文章と感銘しつつ拝読致しました。先ずはお礼のメールにて大変失礼申し上げました。正式には後日あらためて申し上げたく存じますのでどうぞよろしくお願い致します。ありがとうございました。「風舟」船頭・小澤克己
大家の句集評なんてと思いながら受けてしまいまして、
今でも緊張がほぐれません。なかなか思うように言葉が
つづきませんで、もうしわけありません。