1949年生まれ・「空」創刊・「白桃」同人
人生の深淵をちらりちらりと見せることが、奥行きとなっている。その深淵も写生を基本にしていることで、説得力を持つ。
秘すことのはじめ手毬を背に廻し
恐ろしきことも数へて手毬唄
風船を持ち青空に招かれし
母よりも箒が高し冬桜
蟻地獄すべりし跡は蟻が消す
黙りこむ男のやうな蝸牛
箱眼鏡覗くこの世に誰もゐぬ
中で一番と言われれば下記の句になる。何でもない風景である。ほんとうは、いつも橋は架かっているのだが、レトリックが利いている。
どの橋も夜凉の水に架かりけり