季語別 『櫻井博道全句集』 ふらんす堂 2009年1月刊

6日の火曜日は志木のカルチャー教室の日。いつも一人ずつ俳人の代表作を教材にもっていく。その日は櫻井博道さんの句を20句ほどプリントして渡した。博道さんの俳句は、自然なことばで真髄をついているので、誰でも頷いてしまう。それは、初心者の教室でも確信した。

その日帰ってきて、郵便物を開いてみて驚いた。櫻井博道さんの全句集が送られてきたのである。博道さんとは一度だけご一緒したことがある。佐伯祐三のアトリエを訪れたことがあるのだが、他は忘れてしまった。奥様もご一緒だった。しかし、今回の送り主は妹の平林孝子さんなので、もしかしたら、奥様もなくなったのだろうか。なんだか不思議なものを感じながらお礼状を書いた。

収録は「海上」「文鎮」「椅子」椅子以後である。
当日、教室に持っていった博道さんの句を載せておくことにする。

駆けて来て父よりも子の白き息
ななかまど岩から岩へ水折れて
蕗の薹厨の水が田にしみて
岬へ発つ菜飯田楽たひらげて
春星うごく峡の切株眠れずに
春夜買ふ一握の釘菓子のごと
三月の桑畑のぼる男下駄
洋梨喰ふ夜はひたひたと沖にあり
向日葵を支へし棒も傾けり
吾亦紅眼を細めても夕日燃え
やはらかき凧の骨格引き降す
蜜柑狩一日渚のゆるるなり
冬日の象べつの日向にわれらをり
銭湯出てまた汗かきぬ海の駅
十二月八日味噌汁熱うせよ

余談だが、村松友視の「時代屋の女房」は家具屋さんだった櫻井さんの物置を借りた古道具屋がモデルである。古道具屋の主人は、作家の村松友視が友人だったようだ。映画もそこを使って作成した。

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