『暁』 2008年11月号 主宰・室生幸太郎

句集『嘘のやう影のやう』   鑑賞・岡崎淳子  

 『嘘のやう影のやう』は、同人詰「ににん」創刊代表・岩淵喜代子氏の句集、氏には、第一回俳句四季大官受賞の『蛍袋に灯をともす』をはじめ『朝の椅子』『硝子の仲間』他の句集と連句集やエッセイ集がある。
  
  花果てのうらがへりたる赤ん坊
  春窮の象に足音なかりけり
  古書店の中へ枯野のつづくなり
 
 本書は、「春陰」「花果て」「黒揚羽」と季節を追って七章二九六句から成る。どの作品も言葉が実に美しい。やさしい表現の向こうから作者の深い思いがゆっくり立ち上がる。日本語の美しさに改めて魅せられた。 一冊には大きな<象>から<海牛>まで多種多様な生きものが詠まれている。<天上天下蟻は数へてあげられぬ>と小さなものも一句の中でこころを保つ。
 身ほとりの生きものに著者の気持ちが重なった極致の一句が、句集名となった次の作品なのてあろう。
  
  嘘のやう影のやうなる黒揚羽
 
 著者は「、鹿火屋」「貂」に所属されたが、あとがきは、三十年前、立冬の月山の頂上を目指した折の師原裕氏の印象を、月山の黄葉の透明感の中に綴られた優れた文章である。芭蕉に思いを馳せた主宰のひと言は、今なお著者のさまざまな感慨を誘っているのである。 本書はエッセイスト岩淵喜代子氏にも触れる一冊である。

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