境野勝著 詩集『告知』 ふらんす堂 2008年9月刊
境野勝さんは俳号「大波」さん。俳誌「大(ひろ)」の代表である。60ページほどの「ちいさな句集」というのが相応しい。数年前に奥様をなくされて、その「遺歌集」「遺句集」を作り、そのあとご自分の句集「一羽」を上梓した。それも、夫人を偲ぶものだったが、それでもなお、言い足りないことがあるとして、出版したのが詩集『告知』である。一編ごとに物語が成りたつ、心情の濃い句集。
序詩として
エレベーターに同乗した
二歳ぐらいの男の子
はにかみながら笑いかけてくれた
君に
一九五九年の青空の記憶を
贈りたいのだが
たぶん、この詩の中の年度に結婚、あるいは出会ったのであろう。