山田弘子著エッセイ集『草摘』     角川SSC刊

山田弘子氏のお名前をはっきり意識したのは、ふらんす堂の現代俳句12人集の中の1人だったからである。私は句集「蛍袋に灯をともす」で同じシリーズに入集させて貰っていた。

次に山田氏に出会ったのは何のときだったか。坐った席の隣にいらっしゃった。何でそうなったのか、何んでその話をしたのだったか。私は孫を話題にしていた。山田氏が「賢いわねー」とおっしゃったのだけを鮮明に覚えていた。その言葉で美しくちょっと近寄り難いような印象だった山田氏を、身近かにしたひと時だった。

今回エッセイを繰っていくと、東京冒険旅行という項目があった。二人のお孫さんへの東京案内の誘いの手紙から始まって、少女の喜びそうな六本木や渋谷への行程が細かに書かれていた。急にいつかの「賢いわねー」という言葉が思い出され、さらに身近に感じられた。

『円虹』主宰のエッセイ集の内容は、出会った俳人、家族・雑誌発行・幼い頃の思い出などなど多岐にわたる。神戸新聞・円虹・ホトトギスなどに書いてきたものを一集にしたものだが、淡々とした構えのない叙述が、人柄を感じさせてくれた。

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