榎本好宏著 『江戸期の俳人たち』 飯塚書店刊

江戸の俳人というと、数日前に紹介した磯辺勝著『江戸俳画紀行(中公新書)』を思い出す。ことにーー松尾芭蕉の弟子は気の毒である。なかなかすっきりと独立した俳人としてみてもらえない。とかく芭蕉が半分、本人が半分といった存在として扱われるーーという件を思い出す。

今回の榎本好宏さんの『江戸期の俳人たち』には、蕉門とあわせて40人ほどの俳人が紹介されているが、やはり芭蕉の弟子達は芭蕉を語らないことには成立しない。この一書は、(俳句実作者の視点で、作家の人となり、作品の淵源をわかりやすく語りました。というキャッチコピーがあって、文章も「ですます」調の一書である。

一話、すなわち一人ごとに、疑問を投げてそれを解き明かす、というかたちが推理小説の技法のようで面白い。書き出しはやはり芭蕉である。その芭蕉の「文月や六日も常の夜には似ず」「荒海や佐渡によこたふ天河」の二句を紹介しながら、ーー長大な紀行文の中で越後だけがなぜ数行で片付けだれたのかーーという視点から語っている。

たとえば山口素堂の有名な「目には青葉山ほととぎす初鰹」の存在から、鰹談義にはいるのは榎本さんのお得意分野である。その鰹談義によて、この句が「かまくらにて」という前書についての謎が解かれるという具合である。

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