芥川賞

第136回芥川受賞作品『ひとり日和』青山七恵著

久し振りに小説というものを読んだ気がした。
ことに大きな筋書きがあるわけでもなく、とくに大きな起伏があるのでもない。
祖母くらいの年齢の隔たりの遠縁の家に同居している背景、それだって卑近な例はいくらでもある。
この小説は私小説形式をとりながら、十分エンターテイメントの要素を意識しながら書いている。冒頭で出てくる遠縁の女性の名が荻野吟子だって、決して無意識ではないのだろう。その名に読者が

ーーあれっーー

と戸惑うのも計算しているにちがいない。計算しながら決してその名の由来など語らない。
70代の女性と20代の女性の年齢の隔たりの中の、恋や就職、そして将来のこと、そのすべてにいつも切なさが匂う。
生きているのは切なさなで、小説というのは何時の世も、せつなさを描くものものだということを再認識させられた。

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