句集

現代俳句文庫62‥‥ 坪内稔典句集Ⅱ 昔、川崎展宏先生に平行な線路を平行に走るだけで終わっては詰まらないと口癖のように聞かされてきた。坪内氏の俳句の面白さは、平行の線路から必ず外れるからである。取り合わせの妙があるからである。

こんもりと百年があり野ばら咲く
数学の定理はきれい露草も
月光の折れる音蓮の枯れる音

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永島理江子句集「明王」 富士見書房刊

原石鼎に出会っている鹿火屋人というのは、もう殆どいない。その数少ない石鼎に出会っている鹿火屋人である。10代から「鹿火屋」一筋に研鑽してきた句風は、さすがにゆるぎのない名工のような作品群を成している。「鹿火屋」主宰の亡き後は「原宿春秋」の代表として、「琉」同人として活躍している。

原コウ子に学び、句会で遅くなったときには、現在の二ノ宮の石鼎庵に泊まったこともしばしばだったという。石鼎夫人の第一の弟子と言ってもいい。

もの言ひて薄暑の衿をゆるめけり
春暁や紐解くやうに水流れ
待針に待たれつづけて目借時

一見見過ごしそうなさり気ない表現だが、技のある句が並んでいる。

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田中久美子句集「風を迎へに」  ふらんす堂刊

不自由な千手観音大南風
バカみたいと言つて花冷え抱き寄せる
白地着て風を迎へにゆくところ
金魚死に絶えし家にて昼寝覚
蜻蛉を光の傷と思ひけり

どこを繰っても、感覚の冴えを見せる句、発想の面白さを感じさせる句が並ぶ。
「知音」所属。昭和三六年生まれ。

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