買い物から帰ってきたら、家の空気の密度が濃くなっていた。当時小学一年の娘と夫が、とこどきニコッと目を見合わせているような気がした。その四つの目が、私を一点に誘い込むのだ。そう二人は早く見つけて、という信号を発していたのだ。部屋の隅の籠のなかに猫の親子が寝ていたのである。
「どうしたの! この猫」
「迷い猫なんだよ」
「だって‥‥」
迷い猫、と言われてもわけがわからない。親子で迷い猫なんて。情況を把握でききないまま、猫の親子を覗きこんでいた。
そのうち、説明されて分かってきたのは、最初は親猫だけが家の入ってきたらしい。可愛くて牛乳をあげたら、子猫を連れてやってきたのだという。親猫も可愛かったが、それよりも子猫に惹かれて、家におく覚悟をしてしまったようだ。
「最初は偵察に来たわけだ」
「この家なら安全って思ったのかもしれないわね」
わたしがいたら、子猫を連れてきたかどうかわからない。無類の動物好きの親子で留守番していたのが、猫にとっての幸運だった。