嫁入り

  神社のような農家に花嫁さんがやってきた。
 車から降りた花嫁さんは、欅の影を潜って門を潜った。
 玄関の前で、大きな傘を差しかけたのは、そこの母親だったろうか。傘と言っても、雨傘ではない。三度傘といったら分かりやすいのか、田植傘といったらいいのか。その傘を高くさしかけた下を、花嫁さんが潜って家の中に入っていった。
 都会から越してきたものにとっては、何だか狐の嫁入りを見て居るような遠い景色だった。

 二度目に身籠ったのは数ヶ月後だった。まだ最初の出産のショックも覚めていなかったので、避妊の手術にも行かなかった。
 一番先に気がついたのは、何時も膝に乗せている連れ合いだった。
 「そんなー、たいへんだわー」
 猫の恋は年に一回ではないのである。三回くらいは妊娠可能だと分かったときには、もう手遅れだった。春には、家の周りをうろついた雄猫の声で、用心していたが、今回はいつ何処でそうなったのかも気がつかなかった。  前回、わたしの箪笥の抽斗で出産してしまった失敗があるので、早々と大きなダンボールにタオルを入れて、ルリの落ち着けそうな物陰をえらんであげた。

前の妊娠の時に、二、三の心当たりがあったので、子猫の貰い手には心配しなかった。以前の経験でいけば、胎児が母親のお腹にいるのは二ヶ月 くらいだ。傍目にも妊娠とわかったのなら、すでに一ヶ月は経ているのかもしれない。
 欅が少し色付きはじめて、窓からの風景が心なしか明るくなった。欅は私の大好きな木である。春のあわあわと枯れ枝に纏う木の芽の赤み、夏の鬱蒼と茂る葉擦れの音。そして秋の激しい落葉ののさま、そして箒を逆さまにしたような冬木立の樹相。どの季節も楽しめる木。その欅を一本植えた庭があればいいと思っている。そうしたら、ルリの一匹や二匹は庭で飼って上げてもいいと思った。

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