再々会

件の会がいつもの人数の5割増くらいの混みようだった。なにしろ会員の黒田杏子氏の桂信子賞受賞をはじめとする細谷氏・榎本氏などの受賞祝賀会をかねているからである。挨拶が続いて草臥れてきたので後ろを振り返ると椅子が空いていた。

そこで久しぶりにM氏に出会った。黒田杏子さんのお祝いに駆け付けたのだろうか。M氏と知り合ったのは20年位前である。だから当時の彼は40代だったはずである。そのころから文筆業だったから、夜型だったのだろう。歌仙の開始が1時ごろだったがいつも遅れ気味で眠そうな顔をしていた。

連句の会を中止してしまってからは音信不通だったが、あるとき俳句年鑑にM氏の名前があって吃驚してしまった。「藍生」の年間賞を貰っていたのだ。意外だったのは彼が俳句にそんなに真面目に取り組むとは思っていなかったからである。

丁度「ににん」を起こすころだった。それから5年ほど「ににん」に参加していたが何故か5周年を前に退会してしまった。同時に「藍生」も退いていたようだ。俳句にたいする無欲さは、言いかえれば俳句の世界への諦念とわたしは判断している。

彼は、正津さんが碧悟桐を書いているけど僕が書きたい俳人だと言った。M氏と正津さんの差は水と火のような両極にある。それは文体にまでおよぶ。淡々と淀みない文章は熟知の上の熟知が書かせる余裕の文章である。こうした人が俳壇の外側にいるのが惜しいと思う。

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