「書いておかなければならないものがある」という意志を感じる一集である。
惑星の湧くまで夢のうがいする
南半球どたりとパンが湿る
段ボールの宿借りへその笛が泣く
雲一つ持って記号のミジンコでいい
缶コーラーの底へ地球のへその戦火
街じゅう花いちもんめの百円ショップ
一句目は壮大な宇宙と「うがい」という卑近な言葉を繋ぐことに驚く。それは二句目の南半球から「パンが湿る」に至る句にも言える。そうして、「書いておかなければならないものがある」という意志を感じる句集である、既成の俳句的な気分を持って作句する俳人たちに刺激を与えるだろう。
作者は1976年生れ・最近話題になっている《セレクション俳人プラス 『新撰21』 2009年12月 邑書林刊》のメンバーでもある。