野田禎男第二句集『吉野杉』  2010年1月刊  本阿弥書店

 春日向素知らぬ顔をして並ぶ
 角曲がる度に出会へる薔薇の風
 十薬をはみ出す闇の重さかな
 片蔭の途切れ途切れに母偲ぶ
 板の間を磨けば菊の香の届く
 大寒や鉛筆の芯太きまま
 ぞんざいに二百十日の沓並ぶ

 抽出してみると、自然をいたわり見るまなざしが生みだした作品であるのがわかる。著者は「吉野」創刊主宰。帯にーー俳人でない人も共感できるよう表現してきたーーと書きしるしているように、平易なことばで詠んだ作品集である。

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