ビクトル・エリセ

初めて夏石番矢さんのお宅を訪問した。世界俳句協会の発送日なのだ。鶴瀬駅から10分くらいといったが、たぶんその倍は掛かるだろうと思っていた。しかし、実際にはその三倍くらいうろうろしてやっと辿り着いたので、すでに雲井さんが封筒詰めをしていた。正津ゼミの雲井さんがくるので私にも声をかけたのだろう。

 夏石さんから発送のお手伝いしてくれませんか、というメールが入ったときは、実はどうしようかなと躊躇った。同じ日に新文芸坐でその日だけ「ミツバチのささやき」と「エル・スール」を上映するのだ。仕事のあとお茶をいただいて雲井さんに映画のことを話したら、一緒に行くということになり、最終上映だったが心強く池袋まで行くことができた。

「ミツバチのささやき」はスペイン内戦を背景にした小さな村の6歳の少女の想念が生む物語だ。村に映画「フランケンシュタイン」が来て、村中の大人も子供も集まって映画を観る。その中の6歳の少女は姉のことばなどから「フランケンシュタイン」の存在を信じている。姉と共に遊ぶ村はずれの廃墟は少女の夢想の世界への入り口なのだ。

「エル・スール」は「南」というスペイン語。50年代後半,北スペイン.県立病院の医師だった父がある朝突然姿を消す場面から映画は始まる。娘は父が愛用していた振り子が彼女の枕の下にあったことから、父はもう帰らないつもりだとさとる。

そこから、その意味を回想的に物語る。この映画の映像が美しい。ことに美しいのが少女が聖体拝受のとき。花嫁のような少女のためにはるばる故郷の祖母と父親の乳母だった人がやってくる。それほど重大な儀式であることを知るのも、この映画の見せどころ。「ミツバチのささやき」が目的だったが、映画としては「エル・スール」のほうが好きである。この映画はエリセ夫人の原作の映画化だという。

ビクトル・エリセ監督の映画は「マルメロの陽光」をはじめとして語らない映画である。聞くところによると、エリセは「奥の細道」をぼろぼろになるまで読んでいるらしい。そのへんにも語らない映画の秘密がありそうだ。

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