受贈句集から

小澤克己著『星空とメルヘン』 句★解説★英訳 小澤克己     絵  澤田展駒★芳慕  
『遠嶺』主宰の小澤氏が最近発行した上記の本は、そのタイトルのごとく絵本である。色鉛筆で書いたものだそうだが、かなり緻密な筆致と色彩で、説明を読まないときには、油絵かと思った。 
大方は見開きページの絵に一句が付されている。タイトルのごとくメルヘンチックな絵は、癒し系。
「昔からあたためていたテーマ〈星とメルヘン〉の自作を百句ほど抽出し、その中から十五句を選び、題名をそのまま前回、妻(小澤とくえ)の句絵集『絵本のように』でお世話になりました色鉛筆画家の澤田展駒・芳慕ご夫妻より素晴らしい絵を頂きました。‥‥」
と小澤氏ご自身のコメントがある。
この絵と俳句のコラボレーションの中で、一番好きだったのは、 星と星指でなぞれば祭来る の句とその絵である。円い丘のような高みに坐った幼子二人の周りには、二人の脱いだ下駄があり、猫が幼子の指さす空を見上げている。その空はと言えば、金魚が流れて、馬車を曳いた牛がいる。まるで、それらの空を飛ぶものは、「祭来る」の句に呼応するかのようだ。


鈴木直充句集『素影』 第一句集本阿弥書店「春燈所属」昭和24年生
紅梅の闇白梅へ流れけり
鶏頭のぶつかり合うて紅ふかむ
虫籠にかぶせてゐたる帽子かな


竹内知子句集『おもかげ』 第二句集 序文倉橋羊村 角川書店刊「波同人」大正12年生 
生涯に恋一つのみ亀鳴けり
木枯の日暮の声に松の瘤
花の散るこの静けさのゆゑ知らず 


柴田深雪句集 『間祝着』第一句集 序文 茨木和生 ふらんす堂刊「運河同人」1930年生牡
蠣殻の山を崩せり恋の猫
狼祓ふ年縄を田に張りにけり
畑を焼く棒を離さず漢立つ


星野光二句集『透明』水明主宰 昭和七年生
煙突の煙は透明麦青む
三月の入日木立を突きぬけり
闘ひも恋もあるらむ虫の闇


岡本眸句集『午後の椅子』 第十句集 「朝主宰」 ふらんす堂
薮巻の新しければ翔つごとし
枯木みて昨日と今日をつなぎけり
子の部屋にクレヨン借りに秋の蝉


黒川宏句集『山稜』第一句集 鹿火屋同人 昭和八年生
夏祭渡りて橋の数ふやす
ひとりづつ庭へ出てゆく子規忌かな
貧しさの真赤に吊るす唐辛子


谷さやん句集『逢ひに行く』第一句集 昭和三十三年生 愛媛生「藍生」「船団」「いつき組」会員 序文黒田杏子 帯 坪内稔典 富士見書房
春光の鳩に何にもやれぬなり
天道虫たたみし羽のはみ出たる
教室の空白といふ草いきれ
引よせて通草の花のみな落つる
鉄棒の匂ひを洗ふ夏の雨


大崎紀夫句集『榠樝の実』第二句集1940年生
芍薬のはなの崩るる日なりけり
鶏頭をみるたび数へいたるかな
動かざるのみとなりゐる冬の犀

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