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ルリが死んだころ、まだ八重桜が咲いていたのだ。
それは荼毘にするために、かかりつけの医者に連れていったときに、柩の中に八重桜を入れてくれたからである。その経緯は、季節のエッセイ八重桜と光文社刊「わたし猫語がわかるのよ」に書いたので省こう。
荼毘に付したルリの骨は、マグカップくらいの小さな陶器の骨壷になって戻ってきた。
埋葬の場所もすぐ見つかった。越生である。一年間はそのまま、祀ってくれて、そのあと共同墓地に収めてくれるのである。
お骨を預けた年の秋に、家族で骨壷のなかに納まってしまったルリをお参りした。梅の里にも近い畑の中に、その霊園はあった。
新築しなければルリはまだ長生きしていたかもしれない。
ルリの匂いのついていない新しい家が、かえってルリの辛い想い出になってしまった。
だが我が家の三人は、内田百?のように「ルリやルリや」泣き喚くこともなく、狂うこともなく、日を過ごした。そして、猫も犬も飼うこともないまま、もう十数年が流れていた。
千一夜猫物語 完
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とうとうルリちゃん亡くなったのですね。
動物は人より命が短いので早く死ぬのはわかっていても、悲しいですよね。八重桜読みました。名文ですね。
我が家の犬が死んだときは自分でダンボールの棺をこしらえました。
花は入れなかったけれど、近くの犬友から花束が届いて飾りました。
中野孝次著『ハラスがいた日々』を愛読していたころでした。
デザインが変わりましたね。夏らしいです。
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1000回にほど遠い回数で終わらせてしまいました。ブログのデザインはなかなか、思うものがありませんね。