句集『手帖』角川SSC 平成20年9月刊
評論集『現代俳句の海図』角川学芸出版 平成20年9月刊
句集を追っかけるように評論集が届いた。小川軽舟氏の俳句は日常の何でもない風景を諧謔で作品のかたちにする。まさに、これは名人芸というべき作り手である。例えば、「栓抜のみな紐付きや海の家」なんて噴出してしまいそうなおかしみが湧く。
春寒や水に浮いたる鉋屑
蜃気楼弁当箱の真つ赤なり
棲みながら直す二階家籠枕
立葵コックが煙草のみにくる
みひらきてにはとり鳴ける柞かな
冬の蜂日の当る巣に入りにけり
みちばたの葵祭の草の丈
青桐や妻のつきあふ昼の酒
栓抜のみな紐付きや海の家
枝々に時間分ちぬ冬欅
ひろひたる枝濡れてをり秋の虹
空箱を重ねて軽し小鳥来ぬ
評論集『現代俳句の海図』は著者自信が昭和30年代俳人に焦点をあてている、と作者自身が言っている。中原道夫・正木ゆう子・片山由美子・三村純也・長谷川櫂・小澤實・石田郷子・田中裕明・櫂未知子・岸本尚毅・を追っている。