今までの兼題

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 今回の兼題「四角」にもかなり苦労した。具体的な四角なモノを持ってくると、そのものの説明をしているだけということにもなりかねないし、みな苦戦したと思う。それでも、言葉であるからには、挑戦してみたくなるのが俳人根性であろうか。

春めくや四角い空地に呼ばれたる 武井伸子

 この句の主語は勿論作者自身、自分であるが、「呼ばれたる」という受身のかたちで普通かんがえられる「誰それに」がここでは「四角い空地に」となっていて意表を衝かれる。それでも、季語の「春めくや」のお陰もあり、何だか分からないが引き籠もっていた自分を解放するような四角い空地という場に心がゆるんでくる。

あとひとつあれば四角や春の星 服部さやか

 本来意味のあるはずのない星々の連なりに対して、昔から星座というものをつくりだして、人々は空を眺めてきた。作者も冬の大三角形、春の大三角形などを意識されているのだと思うが、適当な位置にもうひとつ目立つ星があれば春の大四角形とでも呼ばれていたのだろうか、などと想像している。それにしても、星々がこのように配置されているのも大いなるものの意志なのだろうか。ん

春隣振り向くカバの顔四角 牧野洋子

カバの顔を正確に覚えているわけではないのだが、このように書かれてみると、ああそうだったかと納得してしまう。心を柔らかくしてくれる句だ。

指で書く四角は歪夏の浜 石井圭子

 プラトンの言っているとおり、我々は四角というものをイデアとして頭のなかに描くが、実際に砂に四角をいくら書いても歪であり、どれも本当の四角ではないような気がしてくる。だが、それも四角であることは確かだ。

座布団の四角に赤子初笑ひ 岩淵喜代子

 赤子の笑顔ほど理屈抜きで嬉しいものはない。しかも、新年の明るい日差しの中で、赤子自身にもまわりの家族にも掛け替えのない時間だ。この座布団の四角の上にあるべき最適なものが丸々とふっくらとした赤子であろうと納得する。
ありようであり、そこから全てが始まるのだといった豊かさを感じさせる。

その他の句

闘牛の四角く組むや土埃 浜岡紀子


母よ永遠に四角の餅を焼きゐしかあべあつこ
蒟蒻を四角に切るも年用意あべあつこ
座布団の厚く四角く冬の客あべあつこ
去年今年目覚時計只四角あべあつこ
餅焼いて四角の思考膨らめるあべあつこ
四肢四角拡げムササビ滑空す宇陀草子
玄室の四角に詰まる寒気かな宇陀草子
日脚伸ぶ鏡四角に理髪店宇陀草子
ビル街の空の四角に風花す宇陀草子
恋猫に開けおく障子穴四角宇陀草子
教卓を四角く拭いて葱坊主岡本恵子
行く春や禅画のぞんざいな四角岡本恵子
寒鯉の外郎に似て四角かな岡本恵子
銀漢や車窓の四角流れゆく岡本恵子
アルバムの過去みな四角年の豆岡本恵子
屋根雪を四角四角に切り卸す河邉幸行子
寒土用書きて寒の字四角かり河邉幸行子
煮凝を四角に分けて兄おとうと河邉幸行子
採氷夫の目分量もて四角とす河邉幸行子
枡席の四角棲みつく戻り寒河邉幸行子
座布団の四角に赤子初笑ひ岩淵喜代子
手にとれば四角い雪よ初芝居岩淵喜代子
獅子舞の口を四角に開けにけり岩淵喜代子
窓硝子四角三角冬の鵙岩淵喜代子
凍鶴の鳴かねば太陽真四角に岩淵喜代子
丸顔で四角く囲む春炬燵鬼武孝江
雪の果指の四角で覗き見る鬼武孝江
丸三角四角の記号黄砂降る鬼武孝江
耕耘機四角四方を耕さむ鬼武孝江
雲映す四角四方の春田かな鬼武孝江
枯芝を四角に束ね店先に及川希子
四角張る夫婦二人は炬燵中及川希子
餅を切る四角をはづれ三角も及川希子
雑煮椀四角い餅と丸い餅及川希子
共同墓地四角に分かち山眠る及川希子
一輌の四角な電車冬田過ぐ宮本郁江
獅子舞の四角の顔に噛まれけり宮本郁江
凍豆腐四角並べて又四角宮本郁江
ピザ窯の四角の口や冬ぬくし 宮本郁江
フィレンツェの四角い広場春浅し宮本郁江
春日差す四角い筥に夢入れて近本セツ子
探梅の折詰四角人思ふ近本セツ子
新社員鞄の角のまつ四角近本セツ子
落款の四角の世界春夕焼近本セツ子
麻酔覚めぎは四角の窓にチューリップ近本セツ子
紙の束四角の儘に冬籠る栗原良子
着膨れて小さき四角を集む癖栗原良子
ヒーターの四角二線で越冬す栗原良子
早春に沈む豆腐の四角かな栗原良子
春の色トレイ四角や旅の朝栗原良子
春の夜のぬけて四角の対角線兄部千達
真四角の巣箱を置きぬリンゴ園兄部千達
蚊帳四角張りし親子に海の宿兄部千達
病鴨を四角い籠に入れにけり兄部千達
月澄みて真四角紙の漉きあがる兄部千達
初掃除四角の部屋の広きこと五十嵐孝子
落椿四角四面の我をすてむ五十嵐孝子
円きこと四角といへずミモザ咲く五十嵐孝子
円ポスト四角になりて雁帰る五十嵐孝子
四角でも丸でもなくて桜餅五十嵐孝子
たんぽぽや四角い神に丸い神高橋寛治
茶懐石炉蓋四角く月朧高橋寛治
款の四角い朱印雉は絵に 高橋寛治
望潮四角四面に招く振り高橋寛治
蒸鰈皿も四角い黄瀬戸かな高橋寛治
聖誕祭四角い箱の積まれたり黒田靖子
四方八方走り回りて年用意黒田靖子
年始の子四角張つたる挨拶よ黒田靖子
バレンタインの日四角とハートのチョコレート黒田靖子
春彼岸四角四面に生きた父黒田靖子
睥睨する絵凧の武者の顔四角佐々木靖子
結界の四角の竹や霜光る佐々木靖子
霜柱仮設テントの跡四角佐々木靖子
金箔の四角浮き出る初燈佐々木靖子
鉄塔の土台真四角草青む佐々木靖子
春間近か四角の先にある未来三島やよい
春湯や四角をくづして溢れたり三島やよい
数独の四角を埋めて霜夜かな三島やよい
山路来て四角に切り取る冬景色三島やよい
お重箱四角に拭き上げ松納め三島やよい
自販機の音の四角に秋の風山下添子
田の四角縁取るごとく曼珠沙華山下添子
満月や三角屋根の四角窓山下添子
四角錘に日向と日影砂炎ゆる山下添子
間取り図に四角のいくつ鵙の声山下添子
猫騒ぐ四角の壁に爪を立て志村万香
春の富士四角の雲に顔隠す志村万香
春昼や祖母の座布団四角かな志村万香
春の海大正琴の四角なり志村万香
二月尽四角にたたむ心意気志村万香
大都会四角い空の五月晴小塩正子
陽炎や四角四面の人とゐて小塩正子
箱庭の四角に沿はせ砂利を敷く小塩正子
この頃は四角い西瓜もあるらしき小塩正子
桐箱の四角が威張るメロンかな小塩正子
雪下ろしまづは四角に切り出して新沢しんこ
蝶の羽化窓の四角を舞台とし新沢しんこ
うぐひす餅四角の盆に安らげり新沢しんこ
真四角の碁盤の升目埋めて春新沢しんこ
鮎獲の投網四角に水を打つ新沢しんこ
早春の四角く畳む白きシャツ新木孝介
金縷梅や四角き物を数へけり新木孝介
どことなく四角き街や冴返る新木孝介
朧夜の檜四角き湯舟かな新木孝介
羊羹の四角く甘く日永かな新木孝介
冬うらら四角に回る武家屋敷西方来人
凍滝を四角に捉へ撮りにけり西方来人
冬館四角な煙突人を呑む西方来人
ビル街の四角な空や月冴ゆる西方来人
一茶土蔵の四角な小窓春の風西方来人
初詣息子の背なの四角張る石井圭子
初写真四角の中に顔幾つ石井圭子
空へ梅入れて切り撮る四角形石井圭子
煙突に四角もありや二月空石井圭子
指で書く四角は歪夏の浜石井圭子
受験生鉛筆握り四角張る千葉隆
春遅々と故郷の山四角張る千葉隆
蜆汁四角に生きた父見舞ふ千葉隆
あんころ餅四角い顔が丸くなり千葉隆
春浅し四角の窓に白き峰千葉隆
冬の大三角形四角にはなれず川村研治
北風へ顔を四角にして対す川村研治
鳥雲に入るや四角いメロンパン川村研治
真四角の悪夢のなかの海鼠かな川村研治
冴返る四角い顔の石仏川村研治
春愁の四角な窓の曇りかな浅見 百
仙厓の三角四角うららけし浅見 百
切山椒噛めばやさしき長四角浅見 百
新玉の四角い枡に祝ひ酒浅見 百
北窓の四角な鏡の冷えきつて 浅見 百
枯野へと四角い物を捨てに行く村瀬八千代
古炬燵四角く家族勢揃ひ村瀬八千代
ふくらんで四角は丸に餅焼くる村瀬八千代
クロスワード最後の四角雪解風村瀬八千代
園庭に三角四角はなすみれ村瀬八千代
駅ビルの三角四角冬温し大豆生田伴子
四角張る心の和む冬帽子大豆生田伴子
雪催四角を連ね列車行く大豆生田伴子
歌かるた朗々四角い札並べ大豆生田伴子
大空の四角三角いかのぼり大豆生田伴子
四角の中の愛食べてみるバレンタイン谷原恵理子
春ショール四角く巻いて柔らかく谷原恵理子
田楽や四角四面の男泣き谷原恵理子
囚はれて四角い宇宙春炬燵谷原恵理子
年ごとに四角くなる顔懐手谷原恵理子
古書店や四角の鉢の福寿草中島外男
海鳴りや四角い庭の黄水仙中島外男
尉鶲四角い石を飛び越えて中島外男
木枯らしや四角のお皿積み重ね中島外男
冬ひなた四角い碁盤を見てをりぬ中島外男
菜の花や四角い肩にドンゴロス中﨑啓祐
湖の春光四角壁に揺れ中﨑啓祐
天窓の四角切り裂くつばくらめ中﨑啓祐
春愁枡の四角に酒を酌む中﨑啓祐
桃色の四角浮遊す養花天中﨑啓祐
仕舞屋の四角行灯春の雪辻村麻乃
春霖に四角八方塞がれて辻村麻乃
水晶の四角錐から春の雷辻村麻乃
白き腹四角く尖り孕み鹿辻村麻乃
振り向けば四角き顔や春外套辻村麻乃
ま四角に父のハンカチ鳥雲に田中美佐子
きさらぎや四角四面の父の髭田中美佐子
郵便番号座りし四角春の雪田中美佐子
酒瓶のラベルの四角花朧田中美佐子
コンビニの四角に灯る朧かな田中美佐子
大嚏四角い顔が爆発す島 雅子
寒燈のつくる四角の濃かりけり島 雅子
まつさらな四角となれり火事場跡島 雅子
桜餅四角い部屋に丸く住み島 雅子
紙で折る器真四角雛あられ島 雅子
真四角の気持ちとはかく大試験島崎正彦
モヂリアニの瞳は四角咳きぬ島崎正彦
冬空を四角に裂いて窓に貼る島崎正彦
春一番四角い顔の朋を連れ島崎正彦
四角盆三角に積む青蜜柑島崎正彦
四角より折り桃色の風船に 同前悠久子
雪解や角砂糖四角も紅茶へと同前悠久子
大好きなエトロのマフラー長四角同前悠久子
蝶の翔び方四角定規で決めないで同前悠久子
五合升四角で計りし春の米同前悠久子
真四角に切り出す氷山の風尾崎淳子
真四角の足跡冬の泉まで尾崎淳子
雛飾る四角き闇をあたたかく尾崎淳子
真四角に日を返したる花筵尾崎淳子
海牛の四角き鰓をそよがせて尾崎淳子
鍋蓋に四角のあらず亀鳴けり浜岡紀子
畳むたび四角小さく春毛布浜岡紀子
鳩すずめ春のテラスの四角かな浜岡紀子
闘牛の四角く組むや土埃浜岡紀子
野遊びやサンドイッチは四角形浜岡紀子
山の気をぎゆつと四角に凍豆腐浜田はるみ
国栖奏の舞や四角に注連を張り浜田はるみ
寒仕込み升の四角に月掬ふ浜田はるみ
水平に柩の四角春の雷浜田はるみ
折鶴を四角に戻し鳥雲に浜田はるみ
紙漉きの水は四角く揺れもどる武井伸子
真四角のビルの裏側北吹けり武井伸子
駅までの雪の三角四角かな武井伸子
春めくや四角い空地に呼ばれたる武井伸子
桜鯛四角い皿に尾が跳ねて武井伸子
啓蟄の大地四角く区切りけり服部さやか
真四角に指で切り取る春夕焼服部さやか
風船を四角き顔で膨らます服部さやか
あとひとつあれば四角や春の星服部さやか
亀鳴くや四角き顔は親譲り 服部さやか
寒の入りわたしの身体四角張る豊田静世
四角四面に生きて孤独や寒卵豊田静世
凧揚げや奴も四角も空泳ぐ豊田静世
折り鶴の始めは四角原爆忌豊田静世
ハンカチの四角を崩し泣く女豊田静世
初写真皆兄弟の顏四角牧野洋子
真四角のシャボンの泡や星月夜牧野洋子
炉の周り四角に囲む炭手前牧野洋子
色褪せる踏絵は四角風つよし牧野洋子
春隣振り向くカバの顏四角牧野洋子
立冬の四角き部屋に暮れにけり末永朱胤
一月の窓の四角き光かな末永朱胤
折り鶴を解きて四角き冬の夜末永朱胤
初泣きの四角き涙ぽろぽろと末永朱胤
四角き扉押して春へと出でにけり末永朱胤
如何ほどの四角で描くか冬銀河木佐梨乃
生チョコを四角く切れば春の泥木佐梨乃
仙人の瞳睛は四角なり春怒濤木佐梨乃
四角からはみ出す色や風眩し木佐梨乃
大空を四角く切って夏隣木佐梨乃
世の濁り蝋梅となる町四角木津直人
残り鴨のぞくとき頸四角ばる木津直人
製鉄夫四角い火を見芹の中木津直人
のりうつる四角い頁燕とぶ木津直人
円顔の志ん生四角いうな木津直人
空つぽのプール四角く雪積もる鈴木まさゑ
天井の四角が歪む風邪籠鈴木まさゑ
進み出て四角へ蹠置く絵踏鈴木まさゑ
席に着き皆四角張る大試験鈴木まさゑ
ハモニカの四角へ息の暖かし鈴木まさゑ
新宿の四角の空へいかのぼり和智安江
座布団もノートも四角冬籠和智安江
月光を四角に折りて冬の波和智安江
天窓の四角を濡らす朧月和智安江
坪庭の小さき四角に春の雪和智安江