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ぽつかりと淡海は暗し後の月 岡本惠子

際だつ表現ではないが、胆略化された切り取り方で、後の月の真下にある淡海の全貌を見せている。風景はそれだけだが、初語の(ぽつかり)が、夜の淡海を童画的な輪郭で捕えて物語性を感じさせる。(喜代子)

約束の近江の秋の小石かな 川村研治

硬質なことばである約束、そうして硬質な物体である小石、その言葉同志がぶつかり合って、不思議な空間を作り出している。小石は本来なら取るに足らないものの代名詞、あるいは礫の類なのである。その小石が近江の秋という古典的な措辞に支えられて、特別な小石となって目の前に差し出された。(喜代子)

雁渡し近江の地図の裏表 牧野洋子

雁渡しという季語は初秋から仲秋に渡って吹く北風のことで、この頃雁が渡ってくるからである。この風が翻したかのように地図の裏表を見せているのが上手いと思う。近江の旅を思い立っているのか、あるいは思い出しているのだろうか。とにかく、手元に近江の地図を広げて、遥かな土地を思いやっている作者がいる。(喜代子)

凍蝶に近江の水の一しずく 浜岡紀子

実際には凍蝶と冬蝶の違いはないのだが、見る側の思いが重なって凍蝶ということばが生まれたのだろう。この句にはそのことが如実に表現されている。凍蝶への想いが、一しずくの水をあげたい、それも近江の水をあげたいと重ねたことで深くなっている。(喜代子)


作品集

湖の周囲にあちこち城跡が尾崎広介
宇宙から湖見ると心に見え尾崎広介
冬ざるる近江に残る玉手箱岩淵喜代子
初冬の近江の水の行方かな岩淵喜代子
行く秋の近江に僧の名乗りあふ岩淵喜代子
霜柱踏めば輝く近江かな岩淵喜代子
暮はやし近江の地図に小石載せ岩淵喜代子
近江路の観音露の扉を開く宇陀草子
観音の時雨れやすきよ北近江宇陀草子
近江路の紅殻格子片時雨宇陀草子
しぐるるや近江に辿る蓮如道宇陀草子
かいつぶり啼きて日暮るる奥淡海宇陀草子
近江路は古戦場なり雁渡る及川希子
近江路の空底抜けて柿熟す及川希子
淡海の風が殖やせり葭の絮及川希子
淡海の時雨は不意に通り過ぐ及川希子
近江商人栄えし町や石蕗の花及川希子
小春日や淡海の揺らす浮御堂大豆生田伴子
初冬の近江の月の碧さかな大豆生田伴子
去りがたき近江八幡冬紅葉大豆生田伴子
近江路のひと日を閉づる冬の鵙大豆生田伴子
小夜時雨淡海の紺を眼裏に大豆生田伴子
ぽつかりと淡海は暗し後の月岡本惠子
近江から京へ疏水の蔦紅葉岡本惠子
冬夕焼近江は陰画の如くあり岡本惠子
枯蓮近江の秘仏六臂なり岡本惠子
鳰鳴いて近江も灯ともす頃ならむ岡本惠子
月光の近江盗賊の末裔と尾崎淳子
葦原を分けて近江の月の舟尾崎淳子
脛までの落葉を踏みて淡海へ尾崎淳子
魚焼く炭火のはぜて近江かな尾崎淳子
訂正のメール近江の星月夜尾崎淳子
釣瓶落しの山ひとつ越す近江かな河邉幸行子
旅にゐて淡海包む秋夕焼河邉幸行子
笹鳴や近江に入りし途中下車河邉幸行子
鮒鮓をたのむ近江の片しぐれ河邉幸行子
枯芙蓉飾る近江の佃煮屋河邉幸行子
約束の近江の秋の小石かな川村研治
露けさの近江より文きてをりぬ川村研治
手枕に疲れて秋の近江かな川村研治
初時雨近江の海を眠らしむ川村研治
たはむれに綿虫となる近江かな川村研治
その水に触れるも畏し冬淡海木佐梨乃
春夜陰淡海さざめく気配あり木佐梨乃
ママチャリの旅や淡海は風が絶ゆ木佐梨乃
日の盛り淡海湖水に立つ鳥居木佐梨乃
年の瀬や近江商人きばりをり木佐梨乃介
ギャラリーの近江商人蕎麦湯出し栗原良子
大津絵と冬に入らむやあふみのみ栗原良子
ヴォーリズの残す近江の聖歌かな栗原良子
近江人に無駄なく蔵の霜夜かな栗原良子
淡海を巡るばかりや冬の暮栗原良子
対岸の淡海の蘆火二つ見え兄部千達
稲光淡海の広さ見せつけて兄部千達
小鮎の目並べて黒し淡海の陽兄部千達
オリオンを天に頂く淡海かな兄部千達
近江路に鳥声響く冬欅兄部千達
淡海に呑み込まれたる秋の空志村万香
淡海晴れ秋一景の浮御堂志村万香
秋しぐれ芭蕉の句碑も濡れて立つ志村万香
淡海に影落としゆく月の雁志村万香
近江路や大湖は秋の風渡す志村万香
近江なるさざなみ聴こえ秋に覚む末永朱胤
雲ひとつ近江を渡り秋日暮る末永朱胤
目を抜かれ「近江女」の秋笑ふ末永朱胤
秋空を琵琶の形に近江の海末永朱胤
淡海の海みわたすかぎり十一月末永朱胤
水郷の近江八幡走り蕎麦西方来人
水うまき近江の国の新酒かな西方来人
すき焼きの匂ひもよしや近江牛西方来人
近江路やかはらけ投げし秋の湖西方来人
謂れ読む近江八景夜半の秋西方来人
大津絵の三味弾く鬼も師走かな高橋寛治
寒念仏鬼も僧衣の大津の絵高橋寛治
小春日や近江の空の淡き色高橋寛治
剽軽な近江の鬼も年惜しむ高橋寛治
冬ざれて神も皺寄る近江かな高橋寛治
ときどきは淡海の端に泳ぎけり武井伸子
いくたびも鳥渡らせて淡海なる武井伸子
きちきちの横つ飛びして近江路は武井伸子
綿虫の肩に下りくる近江かな 武井伸子
冬の実へ羽ばたく音の来て近江武井伸子
冬晴の近江に入りぬ長き貨車近本セツ子
近江より北は知らずと冬の宿近本セツ子
雪折の音をうつつに近江の夜近本セツ子
淡海の障子明かりに風を聞く近本セツ子
淡海の風に乗りたき雪螢近本セツ子
断層の化石となるや冬の潮辻村麻乃
冬の雷大刀無双のお兼呼ぶ辻村麻乃
いしゃだ住む淡海の水の深さかな辻村麻乃
断層の中の蜆も眠りをり辻村麻乃
水面にはなづむ夕陽や山眠る辻村麻乃
淡海をも借景として過ぎし日々同前悠久子
蕪買ひき近江神宮近き店同前悠久子
お歳暮の近江牛にて家族会同前悠久子
小春日や近江八幡のティータイム同前悠久子
義仲寺や初冬のピアザ淡海にも同前悠久子
新蕎麦や近江につづく峠道中島外男
見上ぐれば近江の山からいわし雲中島外男
近江路や山茶花咲きし屋敷跡中島外男
近江路の休耕田や泡立草中島外男
葦原の道を辿れば淡海に中島外男
冬ざれや淡海の波の細かなり中村善枝
芭蕉忌や近江に旅情焦がれゆく中村善枝
曼珠沙華近江の列車揺らしをり中村善枝
冬めきて白く淡海のひかりけり中村善枝
芭蕉忌に人ゆく近江夢の中中村善枝
落雁や湖賊の裔の墓荒れて西田もとつぐ
旅亭「想古亭源内」爐火の燃えたち賤ヶ岳西田もとつぐ
大津絵の鬼のふんどし夕立來西田もとつぐ
葛篭(つづら)尾(お)岬落花いざなふ湖の波西田もとつぐ
画家三橋節子余呉の天女となりて翔つ西田もとつぐ
ふつくらと近江の雀はまぐりに浜岡紀子
踏みしめる北の近江の霜柱浜岡紀子
近江にはあふみの流儀雪あかり浜岡紀子
狐火や近江の兵の影法師浜岡紀子
凍て蝶に近江の水の一しづく浜岡紀子
貝寄風や淡海に白き帆掛け舟浜田はるみ
玉虫の道案内で行く近江浜田はるみ
六十余州近江に通ず秋あかね浜田はるみ
千年を近江に暮らし新酒酌む浜田はるみ
傀儡師の今宵近江の月と寝る浜田はるみ
近江路の庇に掛かる葭簀かな牧野洋子
数珠求め近江八幡までの旅牧野洋子
雁渡近江の地図の裏表牧野洋子
淡海に行き交ふ小舟神の留守牧野洋子
石蕗咲いて魚商ふ近江びと牧野洋子
秋日傘近江の人とすれ違ふ宮本郁江
近江路の蔵に屋号や蔦紅葉宮本郁江
比叡より近江を臨む石蕗の花宮本郁江
板塀の続く近江や初時雨宮本郁江
茶の花や近江の人の屋敷跡宮本郁江
近江路の伊吹下ろしに薬喰山内かぐや
淡海に大津絵ありて秋祭山内かぐや
近江路の鮎の押し寿し獺祭忌山内かぐや
錦秋の瀬田の唐橋擬宝珠なる山内かぐや
はぜ釣りの小舟行き交ふ淡海よ山内かぐや
秋の航近江牛なるランチかな山内美代子
近江路や燈下親しき道の駅山内美代子
近江かな湖上はるかに鳥渡る山内美代子
大花野抜けて近江の駄菓子食ぶ山内美代子
初時雨近江上布の袋買ふ山内美代子
装ひて近江富士立つ水鏡山下添子
木槿咲く近江に万のものがたり山下添子
赤とんぼ近江八景へ向かひをり山下添子
近江路の芭蕉つぶやく秋の暮山下添子
爽やかや近江盆地をスマホ手に山下添子
秋の淡海小さく窓の辺にありぬあべあつこ
浮桟橋きしむ淡海の冬はじめあべあつこ
冬めきし淡海の風をまのあたりあべあつこ
冬あかね淡海湖畔に子のあそびあべあつこ
大和なる近江の國のおでん酒あべあつこ
秋の旅とことこまづは近江まで阿部暁子
鈍行で降り立つ近江秋の朝阿部暁子
京紅葉近江できりりと朝の風阿部暁子
晩秋のふとこの町にもある近江阿部暁子
夜長衆集ひ近江の人のバー阿部暁子
風向きの変り近江の冬立ちぬ新木孝介
寒林を抜けて近江の墓参り新木孝介
残照の揺るる淡海や寒の入新木孝介
思ひたち近江路行けば冬景色新木孝介
待人を待つ間に近江時雨れけり新木孝介
霜月や還暦祝近江まで五十嵐孝子
淡海や冬朝焼けに雲ひとつ五十嵐孝子
近江出て近江に帰る年の暮五十嵐孝子
雪催近江商人ひた走る五十嵐孝子
駱駝乗る淡海までの冬景色五十嵐孝子
近江富士山頂に立つ冬の虹伊丹竹野子
近江路や雪折れの松真青なる伊丹竹野子
日本晴れ為すや淡海の蜆船伊丹竹野子
淡海やお初日背負う湖族衆伊丹竹野子
初凪の淡海を犯す外来魚伊丹竹野子