今までの兼題

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第57回坩堝第58回位置第59回青森第60回模様
第61回王様第62回四角第63回半島第64回懸垂
第65回全身第66回回転第67回珈琲第68回反対
第69回夫・妻第70回隣人第71回危険第72回書類
第73回眼鏡第74回午前・午後第75回人形第76回世界
第77回仲間第78回教室第79回椅子第80回阿吽
第81回土地第82回煙突第83回階段第84回 
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今回の兼題の「受信」は目に見えるものではないため、どのように具体的なものと繋いでいくかというところに、みな苦労したのではないだろうか。それでも、このような兼題に挑戦することで、マンネリから脱却するきっかけが得られるかもしれない。

受信歴積んでコリコリ海鼠かな 高橋寛治

生き物が生きていくためには、常に周りからの刺激を受けてそれに対応していかなければならない。それらすべてをひっくるめてみれば「受信歴」ということになるのだろう。海鼠の体表面のぶつぶつは受信装置と思えばおもえなくもない。海鼠なればこそ、そして、受信という兼題が与えられたからこそこの発想が生まれたような気がする。

オーロラより受信佐保姫うごきだす 浜岡紀子

今回の受信では、いろいろなものが受信しているが、受信した、というところで止まっているものが殆どであった。この句では受信した後、どうなったかに焦点が当てられたところが興味深い。オーロラという美しいものからの受信により、春の女神佐保姫がうごきだすという、魅力的な想像の世界が詠われている。季節のうごきが宇宙からの影響であると思えば、科学的にも理にかなっているように考えられる。

初星やまだ見ぬ魂受信中 阿部暁子

聖母マリアへの受胎告知を連想させる敬虔な思いをひきだすような句だ。初星という祈りの心を促すような季語の働きも効いているのかもしれない。新しい生命の気配を体全体で感じとっていることが分かる。この句、受信という兼題でなければ、通り一遍の甘い句になってしまったかもしれないところ、受信ということばが想像を広げ、成功した作品になったように思う。

天狼のまたたくたびに受信せり 岩淵喜代子

大犬座の首星シリウスすなわち天狼星は、全天でもっとも明るい恒星といわれる。金星や木星などの惑星は瞬きがないが、自ら発光する恒星は瞬きが特徴である。シリウスは冬の大三角形の一つの頂点としても知られており、夜空を演出する主役のひとつであり、その瞬きは、強く印象づけられ、じっと見つめていれば、何か宇宙から伝わってくるものが感じられるのだろう。


予選句

風花の受信一片二片ほど河邉幸行子
葉牡丹の渦や受信を拒まれし河邉幸行子
ふくろふの受信の闇のふくらめり河邉幸行子
あきらかに受信の構へ冬木の芽河邉幸行子
湯ざめして受信のメール子へ返す河邉幸行子
首伸べて受信送信冬の鷺川村研治
日脚伸ぶ南半球より受信川村研治
ザーザーと鳴る大寒の受信なり川村研治
冬木の芽傷つきながら受信せり川村研治
受信して朱の冴返る火山弾川村研治
パルスさへ受信できそな冬銀河木佐梨乃
凍空は太陽風を受信する木佐梨乃
サーバーも春眠なるや受信拒否木佐梨乃
恋猫や夫の視線を受信拒否木佐梨乃
真夏日や違法FM受信する木佐梨乃
つちふるや受信マークに怯えをる栗原良子
受信など気づかぬままに暮れかぬる栗原良子
四百の受信は交信春狂栗原良子
月曜に受信重なる三月や栗原良子
ファックスの受信処理して青き踏む栗原良子
受信したき先師の助言白椿黒田靖子
受信拒否する勁さあり百合の花黒田靖子
マスクしてアイコンタクトで受信かな黒田靖子
受信ランプ点滅するや冬温し黒田靖子
電波時計受信怠る春の真夜黒田靖子
受信音冬の鶯驚かせ兄部千達
冬芒野にころがりて受信音兄部千達
春泥に苦戦中なる受信音兄部千達
茶畑に響き渡るや受信音兄部千達
白魚の黒目の無数受信音兄部千達
着膨れのポケット震はす受信音小塩正子
受信料払はぬままの年の瀬や小塩正子
受信音変へて待ちわぶ初電話小塩正子
待ちわびし受信のありて春近し小塩正子
「受信」とは難儀なお題毛糸編む小塩正子
初旅の伊勢のメールを受信中西方来人
初仕事送信受信試しをり西方来人
スキーの合間受信する子の滑り西方来人
大年や受信履歴を消し忘れ西方来人
寒中の猿の湯入りを受信せり西方来人
ポケットに受信音あり初景色佐々木靖子
福耳は曾祖父ゆづり初受信佐々木靖子
受信音参道にあり去年今年佐々木靖子
餅つきの招集メール受信せり佐々木靖子
探梅や受信感度のよき日向佐々木靖子
風花の如き科白を受信せり島崎正彦
受信日は三月十日皆元気島崎正彦
ユーミンの受信音鳴り椿落つ島崎正彦
雪蹴つて受信を待てり十五歳島崎正彦
受信せし言葉は軽き浮かれ猫島崎正彦
冬ざれの静かな書斎受信まつ志村万香
小春日に旅の誘ひの受信待つ志村万香
冬帽子送つた先の声受信志村万香
忍びあひメール受信の声細く志村万香
初髪を染めて家族の受信待つ志村万香
朝の戸に落葉一枚受信せり末永朱胤
覚め際に受信せる夢冬の薔薇末永朱胤
大寒や世の誰からも受信せず末永朱胤
受信せるあかり宿して寒卵末永朱胤
受信せよ鏡のなかの春の我末永朱胤
枇杷の花星の言葉を受信せり鈴木まさゑ
近未来受信水晶玉冷た鈴木まさゑ
旅始鞄の中の受信音鈴木まさゑ
送受信終へて春待つこころかな鈴木まさゑ
受信音待つや日永を思ひつつ鈴木まさゑ
受信歴積んでコリコリ海鼠かな高橋寛治
初雷や受胎受信の時近し高橋寛治
葱坊主憮然と受信ビル谷間高橋寛治
宝船乱れて夢に送受信高橋寛治
祈禱師の刺青に受信冬銀河高橋寛治
受信せる月の光に滝凍る武井伸子
ふたたびの世に寒北斗受信せよ武井伸子
受信せる青空よりの鶴の声武井伸子
青き薔薇青き氷片受信せり武井伸子
うぐひすのこゑ受信せる大樹かな武井伸子
東風受信墨書のふえの鳴るやうな谷原恵理子
桜小紋受信してゐる春の月谷原恵理子
菜の花や黄金時間受信中谷原恵理子
湖の光を受信寒鴉谷原恵理子
寒の水受信してゐる藍の色谷原恵理子
時に鶲に見られゐて受信中近本セツ子
冬山のかそけき音を受信せり近本セツ子
狐火のひとつ沈むと受信して近本セツ子
受信中からくれなゐに椿落つ近本セツ子
野遊びのははに逢ひしとメール受信近本セツ子
受信機の不確かとなる春の宵辻村麻乃
近況をメールで受くる梅だより辻村麻乃
受信機の点滅それとも春の雷辻村麻乃
広告の一斉送信春疾風辻村麻乃
受信せし文字の歪みて雨水かな辻村麻乃
つばくろの曲にしようか受信音同前悠久子
白椿うなづく受信メロディーに同前悠久子
春愁ひ添付書類の受信かな同前悠久子
初蝶や受信函には和紙封書同前悠久子
春の星からも受信すメッセージ同前悠久子
受信送信行き交ふスマホ花八つ手豊田静世
詐欺電話受信わらわら稲雀豊田静世
初電話孫の元気を受信中豊田静世
はやぶさの映像受信冴え返る(人工衛星)豊田静世
落雷やテレビ受信の途切れたる豊田静世
受信箱空つぽにして成人式中﨑啓祐
バレンタインデー受信もなく暮れる町中﨑啓祐
空間のひずみ受信す葱坊主中﨑啓祐
春の海手旗信号受信する中﨑啓祐
草霞む受信の音は綺想曲中﨑啓祐
風花やファックス受信途切れがち中島外男
初売りの列に並ぶやライン受信中島外男
初雪や次つぎ鳴りだす受信音中島外男
受信音窓を開ければぼたん雪中島外男
嬰児の写真受信や春一番中島外男
鳥ぐもり鳴りつ放しの受信音服部さやか
鞦韆を揺らし尽くして受信待つ服部さやか
待春の受信ボックス空にする服部さやか
日脚伸ぶ受信機からは恋の歌服部さやか
凍星の瞬き受信するラヂオ服部さやか
オーロラより受信佐保姫うごきだす浜岡紀子
受信するたび潮を吹く鯨かな浜岡紀子
雪だるま受信できずに溶けだせり浜岡紀子
受信機にまじる雑音冴返る浜岡紀子
風船を飛ばして受信待ちうける浜岡紀子
流星を受信してゐる猫の耳浜田はるみ
流氷の町鳴り止まぬ受信音浜田はるみ
蝶生れて光くまなく受信せり浜田はるみ
太古より受信返信石ぼたん浜田はるみ
蛇穴を出で送受信乱れけり浜田はるみ
蝋梅の青き空より初受信牧野洋子
寄り添ひて受信してゐる寒雀牧野洋子
受信せよ月の前過ぐはぐれ雁牧野洋子
沼暗し受信してゐる冬の雁牧野洋子
天空のオリオンの盾初受信牧野洋子
絨緞の猫の逃げ出す受信音宮本郁江
突然の母の受信や冬ぬくし宮本郁江
波音の聞こへる窓や初受信宮本郁江
雪掻きの最中に友の受信音宮本郁江
春うららバッグの中の受信音宮本郁江
受信してすぐに返信雪の雷村瀬八千代
しあはせを受信してをり冬菜畑村瀬八千代
初日の出ひとさしゆびの受信塔村瀬八千代
受信音して飛び起きる受験の子村瀬八千代
春の月より受信して旅支度村瀬八千代
学校のアンテナ宇宙を受信せり山内かぐや
出前持ち湯気を抱へて気象庁山内かぐや
十国の峰々春を受信せり山内かぐや
ハンドルの記憶辿りて滝受信山内かぐや
駿河湾金波銀波を受信中山内かぐや
花どきの受信なりしよ忘れ癖山内美代子
受信せり返事は花の絵手紙で山内美代子
春山のときめく谺受信中山内美代子
糸切れし風船目下受信中山内美代子
遠耳に受信阻むか春一番山内美代子
人波におぼるる熊手受信中山下添子
元旦の受信音得て目が覚める山下添子
単音の赤子の言葉初受信山下添子
受信音立ちて一瞬冴ゆる席山下添子
草餅のレシピを受信百通り山下添子
受信人不明通知来寒旱和智安江
空つぽの受信ボックス山茶花散る和智安江
受信料無料といふは狸罠和智安江
春眠の枕の下の受信音和智安江
受信待つ寝転んで待つたんぽぽ野和智安江
零せるもの冬銀河より受信あべあつこ
ポインセチアさくさくファックス受信中あべあつこ
煤逃のシネマの椅子に受信ありあべあつこ
年明けて消去しがたき受信かなあべあつこ
冬晴の出発ロビーにて受信あべあつこ
ににん冬号友のことだま受信せり阿部暁子
初星やまだ見ぬ魂受信中阿部暁子
寝る子らの鼓動受信や雪の窓阿部暁子
冬満月優しさの波受信中阿部暁子
手袋の先より星屑受信中阿部暁子
懐の受信の振動寒の明新木孝介
受信してあちらこちらに黄水仙新木孝介
駘蕩のまた遅れると受信せり新木孝介
朧夜の受信してゐる女かな新木孝介
受信して開き直れば四月馬鹿新木孝介
まがうことなき神の旅五十嵐孝子
受信など気にせぬふりで虎落笛五十嵐孝子
jazzを聴く受信音消す冬の夜五十嵐孝子
冴返る映画観た夜の受信音五十嵐孝子
春霖やバッグの中の受信音五十嵐孝子
冬木立金星の声受信せよ石井圭子
凩やポケットの中で受信中石井圭子
着ぶくれて何処かで誰かの受信音石井圭子
冬銀河受信メールの涙マーク石井圭子
天窓に冬の月あり受信中石井圭子
新玉の大御お歌を受信せり伊丹竹野子
送受信メール交換なる年賀伊丹竹野子
裏白や嗚呼日の本の受信主義伊丹竹野子
姫始反日放送受信拒否伊丹竹野子
賀状にて転居先知る受信人伊丹竹野子
椋の実やポケットにある受信音岩淵喜代子
侘助や耳を澄ませば受信音岩淵喜代子
天狼のまたたくたびに受信せり岩淵喜代子
松過ぎの岬へ運ぶ受信音岩淵喜代子
遠雪嶺受信送信繰り返す岩淵喜代子
豆まきの鬼の携帯受信ベル宇陀草子
鶴引くや帰国命令受信のごと宇陀草子
受信紙の途中詰まりや山笑ふ宇陀草子
探梅の誘ひファックス受信せり宇陀草子
受信メールゴミ箱に捨て木々芽吹く宇陀草子
数へ日や受信メールを消去する及川希子
冬銀河見上げる袂に受信音及川希子
風雪の受信画像は歪ぎみ及川希子
受信歴嵩むばかりに日脚伸ぶ及川希子
受信音ふいに鳴り出すちちろ虫及川希子
「メリーさんの羊」を受信冬木の芽大豆生田伴子
春灯やポロンとひとつ受信音大豆生田伴子
受信メールひらくときめき二月くる大豆生田伴子
建国祭ラジオの受信ままならず大豆生田伴子
大欅ただ今春を受信中大豆生田伴子
啓蟄の砂丘で受信空メール岡本惠子
春暁のチャイコフスキーの受信音岡本惠子
頬杖へ受信振動春愁岡本惠子
星々の受信アンテナ蝶生まる岡本惠子
受信箱読まずに捨てる万愚節岡本惠子
受信音松風時雨午後三時鬼武孝江
未開封受信メールは凍結し鬼武孝江
受信する母のかな文字母子草鬼武孝江
初午や受信トレーをチェックする鬼武孝江
梅ひらく同窓会のふれ受信鬼武孝江