(まひまひ)に出会った作者は、梁塵秘抄の(舞へ舞へ蝸牛 舞はぬものならば馬の子や牛の子に蹴ゑさせてむ踏み破らせてむ実に美しく舞うたらば華の園まで遊ばせむ)を思い出したのではないだろうか。
そうして、目の前の動きを見せない蝸牛は、休んでいるのだと叙したのである。いかにも、次の瞬間には舞いだすかのように詠んでいるのが意表をつく。面白い角度で蝸牛を捉えた本歌取りの句である。
(大崎紀夫第八句集『ふな釣り』 2016年 ウエップ)より。他に(泉へといくつかの手が伸びてゆく)(田の鶴のやがてひと足ふた足と)(木蓮の花びら花をはなれけり)など。