紅白に別れたのは運動会のような風景なのだろう。どちらにしても、紅白は戦い合う群れ同志なのだ。それが(鰯雲を見る)のことばによって日常が非日常に暗転してしてしまう。この暗転こそが俳である。
そういえば、この一句が収録されているのは『自句自戒』というタイトルの一書である。一瞬よくある自句自解の著書だと思ったが、そうではなかった。百句すべてを神野紗綺氏が鑑賞している。このタイトルの付し方にも、十生氏の言語感覚の秘密を垣間見ることができる。
(山崎十生セレクト100『自句自戒』鑑賞 神野紗綺 2014年 破殻出版)