秋真昼蝶の横貌見たやうな   牧野洋子

東大寺大仏殿の盧舎那仏像の脇に銅製の蝶が留まっている。飛び立てば白鳥ほどの大きさになる。二枚の閉じた羽の上に見えるのはまさに蝶の横貌である。
句集名になったこの一句にも横顔が現れる。顔と横顔はわずかな視覚のずれにもかかわらず陰陽の差となるから面白い。もちろん顔は陽で横顔は陰なのだが、人はなぜかその陰の横顔に惹かれるのである。蝶の横貌を見たような見なかったようなと反芻するときに、秋真昼が俄に不思議な時空となる。句集『蝶の横貌』2014年 文学の森 (岩淵喜代子)

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