尾野秋奈第一句集『春夏秋冬』 2014年5月   ふらんす堂

11996年結社「童子」から始まって現在「大」・「船団」所属。
序文を坪内稔典氏が、まるで高校生の同級生同士のような距離で書いている。
そうして坪内氏が帯文で紹介しているのが、やはりあんぱんの句だ。

あんぱんのへそずれてゐる12月

新書版タイプのソフトカバーは手にやさしい。表紙絵もタイトルごとにおかれた水彩画も人柄、いや俳柄というか俳句の空気と通っている感じだった。

魚は氷におもちやのやうな中国語
ほのぼのと鶯餅の指のあと
見えてきて尾の先までも蛇であり
旅にしてわれら昼寝を楽しめり
手袋に夫のかがりし穴ひとつ

比喩が独特である。中国語が玩具のようだという。言われてみれば頷いてしまう。鶯餅への対象の迫り方。、そうして旅で昼寝という措辞になるのも、この作者の生き方なのだ。
最後の手袋の穴、それも夫自身がかがったこも特別なことではないのだ。

12月8日ペコンと凹むアルミ鍋

作者のすべての要素の凝縮がこの一句にはある。

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