帯に金子兜太氏がーーかもめは小生のなかの山中葛子の映像でもあるーーと書き記している。
さくらさくらもんどりうっている臓器
またひとり減る野遊びの鍵音
きたさのさ男踊りは鳥のごと
鵯もいて水色の金平糖
かもめ橋さわやかな佐藤家のおにぎり
からっぽの舟すれ違う天の川
小鳥来る鎖の先に象の脚
平成14年から24年までの10年間の集成は、かわいた感性で対象を目前まで引き寄せてくる、といった感じで句の世界を展開させてゆく。その軽やかさのなかに、(からっぽの舟すれ違う天の川)のような不思議な時空を描き出している。